腹黒元副盟主のわななき

黒い砂漠デネブ鯖『アークエンジェル』、リネレボフリンテッサ鯖「xxxMZRxxx」血盟所属の腹黒い事務員カタリナのリネとは無関係の駄文集

星降る夜に逢いましょう【七夕の思い出】

七夕には苦い思い出がある。

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(キングど田舎シティの七夕祭り)

私が14歳かそこらの若かりし頃、星野君(現・高木ブーとの恋に落ちていなかったので中二の夏だ。

katharinars3.hatenablog.com

通っていた英語塾のクラスメイトの男子とイイ感じになっていたころのお話。

小5から通っていた英語塾でトップクラスの成績を収めていた私は、通常の授業を行うクラスの他に、毎週土曜に学院長が講師を務める特別クラスにも入って4月から通っていた。

通常クラスの講師陣が学院長に推薦しなければ誘われることもない少人数クラスで、生徒のほとんどは幼少期から英語に慣れ親しんでいるようなエリートばかり。通常のクラスとは一線を画した実用英語を中学生の内から学べるクラスで、ここに通っている限りは学校英語でわからないことなど何一つないくらいのレベルだ。その代わり月謝もなかなかに取られるので両親にはかなりの負担をかけていたけれど。

 

そんな特別クラスで私は席が隣の渡辺くんとイイ感じになる。休憩時間中に漫画やアニメの話で盛り上がり意気投合したのだ。

彼は中学男子らしく、週刊ジャンプを愛読しており、当時は幽遊白書が終盤で作画崩壊していたころ。るろうに剣心が連載を開始したころだったか、るろ剣トークが盛り上がっていた。

週刊ジャンプは私と弟、父までもが愛読していて、やれ「飛天御剣流のモデルは侍魂サムライスピリッツ)」だとか「剣心のモデルは河上彦斎だとか、どこにでもいる中学生の会話ではあったけれど、そういうのを20年以上過ぎた今でも覚えている。

 

7月の第2土曜日、講義後に渡辺君が「第4土曜、講義の前半サボってお祭り行かない?」と聞いてきた。

私の故郷は「関東3大七夕まつり」の一つを開催する街だ。毎年7月の第4度金曜から日曜までの3日間、駅前の通りから2キロ離れた市役所前までの商店街を車両通行止めにして出店が立ち並び、商店街の随所でイベントが開催されるお祭りだ。

日本3大七夕まつりと比べるとカス以下の盛り上がりしかないショボいイベントだけれど、遠出することのない中学生レベルだとそれなりに心躍るお祭りなのだ。来場者数だって三日間で80万人を超えるくらいではあるので県内外からも遊びに来る人が多く、関東有数の祭りではあるらしい。ここ20年くらいショボいが

そんな七夕まつりを男の子から「一緒に見に行こう」と誘われた。これって、デートのお誘いなのだろうか。そうに違いない。人生初のおデートだ。二次元をこよなく愛していようが、腐り散らかしていようが、同じクラスの仲のよさそうな男子ふたりで掛け算していようが、私だって女の子だ。デートのお誘いに心ときめかないはずはない。ワクテカしながら2週間後を待ったものだ。

***

当時、私は携帯電話なんて持っていなかったし、それ以前にその頃の携帯電話は鈍器として使用することが可能なくらい巨大なサイズ。デジタルムーバは高価すぎて庶民には手に入らず、一世代前のショルダーホンが主流だったのだ。

 

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家の電話を都度つかうことなんてできないので連絡手段は土曜の塾の講義のみだ。次の土曜には駅前のどこに何時に待ち合わせるかなどの詳細を決めて、デート当日を迎えることになった。7月の第4土曜日。学生は夏休み最初の土曜日だ。私は精一杯のオシャレをして、駅前の訳の分からない水うんちみたいなオブジェの前で彼を待つ。いや、水うんちは言い過ぎた。

 

たしかお昼ちょうどに待ち合わせをしていた。出店が立ち並ぶ商店街を歩くのだから、それなりに食べ歩けるくらいにはお腹も空かせた状態で、渡辺君を待つ。ところが、待てど暮らせど彼は現れなかった。

 

待ち合わせ場所は間違いない。キングど田舎シティと呼ばれる我が故郷の駅前で待ち合わせるとしたら、うんちのオブジェの前か、駅前にそびえたつデパート(現在はただの廃墟)の仕掛け時計の下くらいしかないのだ。とすると、時間を間違えたのだろうか。いや、それもない。昼ご飯の代わりに出店でいっぱい食べようと言ったのはそもそも渡辺君なのだ。その彼が現れない。

何か事故にでも巻き込まれたのか、それとも駅前を闊歩しているチンピラにでも絡まれたのか。嫌な予感が脳裏をかすめる。

30分ほど待っても彼は現れなかったので、私はこちらから彼を探すことにした。うんちの前を離れ、駅の反対側のロータリーをくまなく探す。居ない。

元の待ち合わせ場所に戻っても彼は見当たらなかった。

結局見つからないまま駅前を彷徨い、気が付くと約束の時間から2時間近く経過していた。ほとほと探し疲れて、うんちの前の広場を見渡せるバスロータリーのベンチに座り、ぼけーっとうんちを眺めている私

座って落ち着いてくると、頭の方も冷静になってくる。

そもそも何で私はこのお誘いにOKしたのだったろうか。よく考えたら、仲の良い友達ではあるが、彼の事が好きという訳ではない。仮に向こうが私に好意を寄せていてくれたとしても、わたしはそれを受け入れるだろうか。わからない。

人生初のデートのお誘いだ、ということで舞い上がって二つ返事でOKしてしまったけれど、例えばTVドラマよろしく告白なんぞされたところで多分わたしはOKしない。だって腐っているんだもの

こちらが好きになったのならいざ知らず、相手からのお誘いじゃないか。なんか、こっちが苦労して探そうとしているのがばかばかしくなってきた。

そんなふうに思えてきて、ソロで祭りを楽しむことにした。お腹すいてるし。

キングど田舎シティの駅前商店街から市役所へ通じるお祭り通りは人がごった返している

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(色鮮やかな七夕飾りとごった返す人間)

たかだか1.7キロほどの道のりだが、人混みのせいで歩みは遅い。片道にして1時間近くかかってしまう。色とりどり、趣向を凝らした七夕飾りを見ながらゆっくりと歩く。

300mほど歩いたところで雑居ビル跡地を駐車場にした開けた場所があり、休憩所を設けている。人に酔いやすい性質のわたしはそこで一旦休憩することにした。うん、ソロだと全然楽しくない。

休憩所の周りにも出店が立ち並び、昼間っから宴会を催している赤ら顔のじーさん連中を横目に出店で買ったお好み焼きをもひもひと食べながら何ともなしに休憩所の中を眺めていると、私の目にアリエナイ光景が飛び込んできた。

 

渡辺君が居た。見たことのない女とクレープ食べてた。服装や化粧の仕方から察するに多分2~3歳年上であろうギャルっぽい女とやけに親しげに話していやがる。ていうか、距離がスゲェ近い。鼻の下伸びまくってた。もう祭りの後に連れ込み宿にしけこんで、しっぽり行くのが目に見えるくらいのイチャつきようだ。

ふーん、そっか。あたしよりその女とデートした方が楽しそうだから、あたしのことは忘却の彼方ですか。そうですか。そうでしょうね、その女、乳もそれなりにありそうだし、頭悪そうだし、本能の赴くままに変な棒を出したり挿れたりしちゃいそうなアッパーパーな人物に見えるもの。ちょっと刺激すればすぐに脱DTできるだろうよ。夏だからね、身も心もあそこも開放的になるよね。

確かに私はカラダも貧相ですし、処女ですし、挙句にオタクだし腐女子だしでそう簡単にカラダを許すようなキチガイではないですわ。うん、死ねばいいのに

 

私は渡辺に裏切られたことよりも、ほんの20メートルほど先で痴態を繰り広げるその女に負けたという敗北感で満たされていた。うん、死ねばいいのに

そういえば渡辺は「講義の前半をサボって」とか言っていた気がする。ということは、この女と変な棒を出し入れしたあとしれっと講義に出るのだろうか。その時に私と会ったらどんな言い訳をするのだろうか。

親戚が倒れたとか、具合が悪かったとか子供じみた手を使うのだろうか。これから大人になろうというのに。まぁ、いい。

携帯電話などない時代。リアルタイムに状況を伝える手段がないことにより、ドタキャン(死語)してしまったとしても、その後のフォローが容易かった時代。きっと彼は泣きそうな顔をしながら謝れば私が許すとでも踏んでいるんだろう。残念でした。見てしまったものは仕方ない。黒リナ発動である

私はいつも通りの時間に塾に行った。当然、そこに渡辺の姿はない。きっとあの脳ミソ水うんちのアッパーパーな女としっぽりずっぽりとヤっているのだろう。

特別クラスは何故か女子が8割を占めていた。男子は隅っこで肩身の狭い思いをしていたのだ。

私はその場にいた女子たちに事の真相をぶちまけた。話に尾ひれと背びれをほんの少しつけて。つまり、

「渡辺君にデートに誘われてお祭りを見に行くはずだったが、彼は現れず、リナは泣きながら(この辺が尾ひれ)一人で歩いていたら、偶然アタマの悪そうな女と渡辺君がイチャついているのを発見。会話を盗み聞くとこれからどこぞのホテルにて脱DTの儀式を執り行うらしい(この辺が背びれ)。乙女の純情を踏みにじった渡辺許すまじ(この辺も尾ひれ)

 

クラス中の女子が怒り狂っていた。隅っこの男子はその様を見てガクブルしていたからね。その日はどうやって渡辺を糾弾するかの会議が休み時間の度に繰り広げられた。もはや勝敗は決したようなものだ。渡辺に勝てる要素は一つもない。さようなら渡辺君。貴方の居場所はこのクラスにはなくなってしまいそうだ。まぁ、因果応報だけど。

 

結局その日、彼は現れなかった。そして次の土曜日に現れた彼は、予想通り親戚の不幸という極めて使い古された手を使い謝罪してきた。私は目を閉じて黙ってそれを聞いていたが、ひとしきり彼が話し終えると一言だけ言葉を発した。

『DT卒業おめでと』

「え!?」

私は何の感情も持ち合わせてはいなかったが、クラスメイトの女子たちが堰を切ったように渡辺を糾弾し始めた。

聞くに堪えない罵詈雑言。最初の内は渡辺も「そんなのでっちあげだ」とか「証拠がない」とか反論していたけれど、

『クレープ美味しかった?あの人は高校生かな?胸おっきかったもんね』

と無表情に私に告げられると顔を真っ赤にして俯いてしまった。

彼は荷物をもって教室を後にし、しばらく特別クラスに現れることもなかった。

新学期が始まってから久々に顔を見たが、同時に席替えがあり、隣の席ではなくなったこともあり、その後は口をきくこともなかった。

七夕って牽牛と織姫が年一回、天の川を渡って逢瀬するというロマンティック街道なお話に由来しているはずだけれど、私にとってはそんな何とも後味の悪い苦い思い出になった

 

 

 

 

ところで、私は今も毎年このキングど田舎シティの七夕まつりに出かけている。もちろん旦那様と二人でだ。結婚する前、付き合いだした頃にこの話を彼にしたら、「苦い思い出のままに終わらせるのはつまらないので、毎年楽しみにするくらいの恒例行事にしよう」と、私を連れ出すようになった。

もう12年ほど前の事だ。思い出を消すことは出来ないし、上書きすることもできないけれど、それ以上に楽しい記憶を増やせばいい。

 

今年(2018年)も私は故郷の七夕祭りに出かけた。最終日に出かけたのだけれど、あいにくの台風の直撃のせいか前日のイベントはすべて中止されていたようだった。きらびやかな七夕飾りもそのほとんどが仕舞われてしまっていた。その代わり、といってはアレだけれど、3日目の来場者数は半端なかった。二日目の来場をあきらめた人々がせめて最終日はと、どっと押し寄せたのだろう。

ここ数年、来場者数や出店の数は減少しっぱなしだったけれど、私が子供のころに見たキラキラした七夕祭りの人入りを見た気がした。怪我の功名というやつだ。

相方は終始ご機嫌だった。毎年お気に入りの出店が同じ場所で商売をしているのだけれど、今年も元気に商売していた。毎年恒例のご機嫌伺いをする。また来年ね、と。

あの日、私がするはずだったお祭りデートを、相方は毎年してくれる。だからかもしれない。

今は決して、七夕まつりは嫌いじゃない

 

渡辺君の顔は、もう思い出せない。