腹黒元副盟主のわななき

フリンテッサ鯖「xxxMZRxxx」血盟所属の腹黒い事務員カタリナのリネとは無関係の駄文集

【レジデンス・オブ・イービル(後編)】

(前回までのあらすじ)

弟、水戸の土地でゾンビになる。ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ。
katharinars3.hatenablog.com

 

危ないところだった。もう数日来るのが遅ければ、うちの愚弟はこの世に居なかったかもしれない。

とりあえず、私は大家さんと不動産屋さんに愚弟をキングど田舎シティへ連れて帰ることを伝え、骨と皮のガラクになり果てた愚弟を私の車に押し込む。 

f:id:katharinaRS3:20180817192058j:plain

長男が生きていたことをひとまず喜ぶ母。泣きすぎて化粧堕ちかけてた

部屋に乗り込んだ時はゴミ屋敷という感想しかなかったが、

f:id:katharinaRS3:20180817192126j:plain

改めて振り返り部屋を見ると、ここ数日食事をした痕跡が全くなかった。炊飯器の中にはカピカピになった白米が一握り分ほど。電気が止められているらしく、保温もできなかったのだろう。

冷蔵庫の中身はほとんど空っぽで、かつて麦茶だったであろう液体がポットに入ったものが入れてあったが、電気が止まって何日過ぎたのかわからないが異臭を放っていた。

こんな状態になるまで何故SOSを寄越さなかったのか謎だが、生来のコミュ障が災いしたのか、はたまた家族の反対を押し切って一人暮らしを始めた手前、恥ずかしくて言えなかったのか、いずれにしてもなかなかヒドイ有様だった。

 

とりあえず栄養失調でガリガリにやせこけてゾンビにしか見えない愚弟を連れて、車で少し走ったところにあるレストランで昼食をとることにする。

移動中の車内でも弟は無言でうつむいたまま。時折母が話しかけると声を発するでもなく無言で頷いたりはしているようなので、ぎりぎり受け答えはできるようだった。

 

何日ぶりの人間らしい食事だったのだろうか。文字通り貪るように肉塊(ハンバーグ)をガツガツ食べる弟。もともと大食いな性質ではなかったが、ゾンビ化して食欲が前面に出てきたらしい。バイオハザードの最初のゾンビみたいだった。

f:id:katharinaRS3:20180807114845j:plain

母は食事中もしきりに弟に話しかけていた。

仕事はどうしたのか。彼女はどうしたのか。なぜ連絡を寄越さなかったのか。

そのほとんどの問いかけは無言で返されたのだけれど、食事を終えて愚弟に血色が戻ってきたころ、ぽつりぽつりとゾンビが語り出した。

 

 ***

 

水戸に移住後、〇光義塾という個別指導塾とフランチャイズ契約をしていた地場企業でエリアマネージャーとして正規雇用された弟は、しばらくは粛々と就労していたようだが、地場企業にありがちなブラック体質に耐えられなくなって段々と自律神経をやられていたようだ。

 

朝オフィスに出社後、市内数か所の全教室を回り、昼間は駅前でのチラシ配りとポスティング、夕方から稼働する教室を回り講師陣とミーティング、講師に欠員が出たらその代行もさせられ、夜は講師たちのシフト作成・管理。業務を教えてくれるはずの先輩社員もおらず、ほとんどアドリブだったらしい。これらに加えて、クレーム対応、生徒とその親御さんとの面談、進学先の情報収集、入れ替わりの激しい講師の募集対応、月謝の徴収とその検算、その他事務仕事全般…とてもではないがろくに社会経験を積んでいない新社会人に耐えられるほどの仕事量ではなかったのだろう。多分。

 

結果、愚弟は壊れた。業務放棄に近い状態で数日を過ごし、致命的なミスを犯した。

月謝の計算が合わないが、管理を怠ったため、どこの生徒さんが未払いなのかがわからなくなってしまった。会社からは散々にこき下ろされ、始末書の束を作成することになった。

その辺りで、彼女に対して愚痴が増えたのか、あるいは無能を見透かされたのか、弟はあっさりと捨てられた

仕事は何とか首の皮一枚で繋がったが、失態の責任を取らされ、嘱託社員に降格された。

嘱託社員といえば聞こえはいいが、同一賃金同一労働の原則からは外れた処遇だ。

同じ業務を時給でやらされる上に、残業についてはみなし残業なのだ。月収は半分になったらしい。懲戒処分にならない代わりに、自主退職を暗に促す中小企業にありがちなやり方だ

食わねばならぬ一人暮らし。弟はそんな状況でも数か月耐えたが、ついに退職した。

そしてぎりぎりの生活すら送ることができなくなり、今に至る。

 

母はその話を聞きながら時折「バカだねぇ」と眉をひそめながら言い放ち、私は「うん、アホだね」と相槌を打っていた。

 

この程度の境遇の人間など、現代社会においてはごまんといる。こいつ一人が不幸なわけではないのだ。

同情すべき点は多少なりともあるが、この世の不幸を一身に背負ったかのような語り口に腹が立った。

まして、こいつはあのキチガイオヤジの血を色濃く引いているはずなのだ。この程度の不幸など跳ね除けるくらいの気概が欲しかった。だって、簡単に言ってしまえば

「親の反対を押し切って女の尻を追いかけて、できもしない一人暮らしを始めた結果、生活が破綻して死にかけた」

ってだけだもの。全部自分のせいじゃん。今の状態だって因果応報

挙句に、その尻ぬぐいを家族にさせているのだもの。むしろ母が不幸だ。

私は弟にだけは容赦しない

家族の絆を大事にしない奴に、他人との絆なんか構築できない。こちらが差し伸べた手を払いのけるような奴なんかに。

 

そう思っていたが、それでも母は何とかしようと手を差し伸べた

さすがに、自分がお腹を痛めてひり出した長男を見捨てることは出来ないらしい。仕方ないから、これがラストチャンスと思って母に協力することにした。

 

***

 

1週間後、再び私は水戸を訪れていた。

今度は当時付き合っていた今の旦那様を連れて。あの惨状を私と母で片付けるのは体力的にも無理だし、弟は母と公共料金の支払いやその他諸々の引越しの準備に奔走しなければならないため、彼を駆り出した。

うちの旦那様は、家の中では気持ち悪いくらいの甘えん坊だが、外に出ると鬼軍曹といわれるくらいの漢だ。きっと母の前でなら普段以上に働いてくれるに違いない。

 

***

 

改めて愚弟の部屋を見る。

どこから手を付けたら良いのかわからないほどのゴミ屋敷だ。よく夕方のニュースで特集を組むようなゴミ屋敷があるけど、ぱっと見はあんな感じだ。

 

ひとまず母と弟は東京電力やガス屋、水道局へ出かけ滞っていた公共料金の支払いと2週間後の解約の相談に出かけ、私は旦那様と黙々とゴミを片付け始めた。

 

電気とガスはひと月滞納すると止められるが、水道まで止められるのは末期だ。これだけをすべて一括で支払うと数万円が吹っ飛ぶ。これは全額母が負担した

一方ゴミはというと、純粋な可燃ごみだけで45リットルの指定ゴミ袋10袋がいっぱいになったが、まだ入りきらないゴミが沢山。

中身は弁当の容器や紙パック飲料のゴミ、古新聞や塾のチラシ、生ごみ使用済みコンドーム、TENGAなど。

アパートのゴミ置き場を弟が出したゴミが占拠した。

片付けている途中でヤバいものが沢山出てきた。

勤め先のチラシに混じって、生徒さんの個人情報が記載された入塾届。これはさすがにそのままの姿では処分できないので、旦那様に駐車場の一角で焼却してもらった。

 

駐車場といえば、弟が知らぬ間に買っていた軽自動車、ローンの保証人がヒカル(元カノ)になっていた。どこまで愚かなやつなのだろう。しかも、ポストにヒカルからの手紙が入っているのを母が見つけて内容を確認、その場で激怒していた。

「私が保証人になっているものすべての契約を変更し、保証人を変えてくれ」的な内容だった。車のローン、クレカ、家賃の連帯保証人。

別れた後、ヒカルとは一度も連絡を取っていないとのことだったが、正確にはヒカルはコンタクトを取ろうとしたのだが、うちの愚弟が拒否をしていた模様。どこまでクズなのだろう。

愚弟の軽自動車はガソリンが極限までなくなりかけていて、エンジンをかけた瞬間にガソリンランプが点滅したらしい。ひやひやしながら最寄りのガソリンスタンドまで行き給油したらしい。当然これも母が支払う。

驚いたことに、弟の財布の中身は小銭が数十円。預金残高は9円だった

職を失い、生きる気力もなく、仕事を探す気もなくなっていた愚弟。コミカルに描いてはいるけど、多分あと2日くらい私たちの到着が遅ければ死んでいたね。

 

昼過ぎには電気が復活したので速攻エアコンを稼働させる。フィルター清掃なんか全くしていなかったのだろう。この世のものとは思えない悪臭がエアコンから噴き出してくる。

私の悪心を察したのか、速攻旦那様が持参していたエアコンフィルター用のスプレーで清掃してくれる。ゴミ屋敷に似合わないフローラルな香りが部屋を満たした。

 

母が途中にコンビニで買ってきてくれたお弁当を4人でかきこみ作業を再開する。

 

あからさまな可燃ごみの袋詰めが終わったので、次に弟でなければ判別できないものの仕分けを始める。

床に散乱した洋服や、下着類。当然といえば当然だけど、ヒカルのものと思しき下着も出てきて「うわぁ・・・」ってなった。

 

何か月干していないのかわからない布団は旦那様がカッターで切り刻みゴミ袋の中に。

実家に持ち帰っても置き場のない食器類はまとめて段ボールに。

布団の周りに所狭しと鎮座していたメガストア快楽天はすべて紐でまとめてひとまずベランダに置いた。

部屋の中にはこれでもかってほどの漫画が散乱していたけど、愚弟はもう読まないと抜かしよるので、すべて段ボールに入れて我が家に持ち帰り。後日すべて売却し、ここまでのわたしたちの手間賃として頂戴することにした。

陽が暮れるころまでかかって、床に散乱していたものはほとんどがゴミとなり、一日目はここまでで終了。

真夏だったせいもあって全員汗だくで帰路につく。

 

***

 

二日目。3連休がまるまる愚弟のせいでつぶれることになる。

昨日の時点であらかた床は片付いたので、今日はクローゼットの中と、水回りの清掃がメインだ。

ユニットバスもなかなかにカオスだった。

端的に表現して、「ヘドロいっぱい」

あまりの汚さに私は半狂乱になって塩素系洗剤で磨き続けた。

トイレとお風呂を掃除しただけで半日潰れるとかアリエナイ

 

母はキッチン回りの清掃。排水溝に溜まったヘドロを歯ブラシでガリガリ削っていく。途中でギャアとかウワァとか凡そ掃除中には出ないはずの悲鳴が聞こえるがもう気にしている余裕はない。

 

旦那様は床と壁の清掃。オレンジオイル系洗剤で二度三度と磨いていく。弟はヘビースモーカーだ。床はともかく、壁のヤニ汚れは尋常じゃなかった。もうね、深夜のショッピングチャンネルで紹介しているような洗剤のビフォーアフターみたいになってた。

f:id:katharinaRS3:20180817193859j:plain

弟はというと、市のごみ処理場に直接持っていけば引っ越し時のゴミを引き取ってくれるというので、ゴミの運搬をしていた。途中で水分でも取りなさいと母に1000円のお小遣いをもらって出かけたが、あのクソガキは煙草に使いやがった。生粋のクズだと思った。

 

午前中であらかた清掃が終わったので、ラストスパートとばかりにクローゼットの中を片付け始めると、母が「ナニコレ?お姉ちゃん知ってる?」と私に持ってきたものがあった。

 

ディ〇ニーのイラストが描かれている可愛らしいデザインだが、どこからどう見てもピンクローターだ。

「・・・」

 

私も旦那様も絶句した。うん、知ってる。知ってるけど説明はしたくない。しかも使用済み。多分、夜な夜なヒカルとの営みに使用されたのだろうけど、捨てとけよこんなモン…。後生大事に取っておくものでもないだろ。

「あ、まぁ、これはゴミでしょ。ゴミ」

と旦那様が即刻ゴミ袋に放り投げた。

これ・・・もしかしてその手のグッズがクローゼットの中にひしめき合っているのだろうか・・・。さすがにオカンがそれらを探り当てるたびに私の所に持ってこられるのは耐えられそうにないくらい辛い。

私は母と交代し、まさに地獄絵図となったクローゼットの中を整理し始めた。

 

ここ数年、弟がどのようなナイトライフを送ってきたのか想像したことなんてなかったけど、よく考えたらコイツは肉欲の権化だった。

出るわ出るわ、おもちゃの類が

電動こけし

f:id:katharinaRS3:20180817195817j:plain

電動マッサージ機

f:id:katharinaRS3:20180817200032j:plain

ピンロー、ディルドー、オナホ、ローション(ペペ)数本、媚薬と思しき塗り薬、アイマスク、ピンクの蝋燭、おもちゃの手錠、チャイナドレス…etc。

 

本気で殺意が芽生えたからね、弟に対して。T-ウイルスあったらコイツに打ち込みたい。打ち込んだ直後にヘッドショットしたい。

f:id:katharinaRS3:20180817200611j:plain

コイツとヒカルは夜な夜などんなプレイしてたんだろ・・・と、旦那様との間にも微妙に気まずい空気が流れる。別れた女と使った玩具の数々を後生大事にとっておくとか、女々しいを通り越して、マジにアタマおかしい

 

カオスなクローゼットの中身は可燃ごみ以外全てそれらで占められていたので、問答無用で不燃ごみイキ。オカンに説明するのも煩わしかったので無言で廃棄

弟はどんな気持ちで次々とゴミ袋に放り込まれるそれらを眺めていたのだろう。

 

二日目も何とか乗り切った。弟への殺意は増大するばかりだけど、やり切った。

残すは3日目。オトンも出動しての引越しだけだ。

 

***

 

3日目。今日で3連休も終わり。まじふぁっく

 

いつも通り朝イチにキングど田舎シティへ赴き、母をピックアップする。

今日は我が家のキングオブキチガイこと父上が運転する4tトラックに弟を押し込む。

父が会社から無断借用したトラックにはナビもついているし、住所さえ知っていれば単独で辿り着くことも可能ということで、全く後ろを気にすることもなくハンドルを握る私。

3日目ともなると道も覚えてナビなしでも水戸までスイスイ行けるようになっており、まぁ二度と訪れたくないけどアパートに到着。

まずは大家さんにご挨拶し、滞納していた家賃を支払う。ほんとにあいさつ程度だけど菓子折りを持って。ここの大家さんは本当に人が良くて、ご迷惑をおかけしたことなど気にもしていなくて、むしろうちのゴミみたいな弟の行く末を案じてくれていた

こんな良い大家さんの部屋で夜な夜な怪しげな嬌声を上げさせて肉欲に溺れていた我が弟は本当にキングど田舎シティに帰ったら死んだほうがいいと思った

 

引越しの荷物はテレビ、CDコンポ、ゲーム機などのデジタル家電と、洗濯機、冷蔵庫の大型の家電。そしてテーブル代わりのミニちゃぶ台と一人掛けのソファが2セット。あとは段ボールに詰められた書籍が数箱だけだ。

 

積み込みは父と旦那様、弟の3人で行い、滞りなく終わった。

私と母は荷物が退けられた箇所の拭き掃除と、ダメ押しのトイレ掃除を行い、不動産屋さんの退去時チェックの応対をした。さすがに3日かけてみっちり掃除したからか、すべて敷金で賄えるとのことで、追加徴収なし。

ここに至るまでで、オカンは20万円くらいどぶに捨てているので僥倖だった。

洗濯機は新古品だったので途中私の部屋に寄ってもらい交換、冷蔵庫は家電量販店に立ち寄り引き取ってもらった。家電リサイクル法の関係で5000円くらい取られたけど、差し引きしても洗濯機がリニューアルして、愚弟の部屋から持ち帰った書籍を売り払ったおかげでほんのわずかだけど黒字だったのでよしとした。

 

***

 

かくして、ゾンビになった我が弟の水戸ライフは幕を閉じた。

キングど田舎シティへの帰還後、愚弟のお金関係を洗っていくと、負債だらけでとんでもないことになっていた。

大学時代に貸与されていた奨学金の返済も滞っていたり、クレカのショッピング枠の支払いがかなり残っていたり、車のローンの支払いが滞っていたりと、結局100万円くらい母が肩代わりした。あまりにも母がかわいそうなので、私も少しだけ背負ってあげたけど。

父上は「弟は心の病気だからしばらくはそっとしておこう」と的外れなことを言っており、あのくそったれ弟はニート生活を送り、ようやく働き口を見つけたのは半年後の事だった。

その間も、妹はゴミを見るような目で弟を見ていたに違いない

f:id:katharinaRS3:20180817200914j:plain

母はというと、彼女なりに一生懸命弟のために働き口を探して歩いたようで、「世のお母さんは偉大だな」と思うばかりだった。

 

***

 

先日、久方ぶりに実家に帰省したおり、母と談笑しているとふいに弟の話題になった。

話を聞くと、あれから数年が経過して弟もすっかり中年太りし、みるからにふてぶてしく生きているらしい。仕事も慣れたらしく毎晩遅くに帰ってくるらしいのだけれど、相変わらず自分の好きなことにしかお金を使わないらしく、あの当時母が肩代わりした借金も返ってくる気配がないらしい。

ただ、女には懲りたらしく、帰省後も女の気配が全くしないらしい。もう三十路はとうに超えているのだから、そろそろ、と思わなくもないのだけれど、もしかしたらホモに逆戻りしてしまったのだろうか・・・?

 

少し心配になったので、奴が外出しているの隙に、弟の部屋を覗いてみた。

・・・タバコ臭い。そして、タバコに混じってなにか他の異臭がする。

 

閉め切られたカーテンを開けて、陽の光を部屋に入れる。

 

相変わらず、整理整頓とは無縁のきったない部屋。

ふと視線をヤツの寝床に移す。

 

メガストア

快楽天

コミックペンギン

 

 

 

・・・奴は何も変わっちゃいないと思った

誰かアイツをキルして・・・。

レジデンス・オブ・イービル(中編)

(前回までのあらすじ)

弟(ホモ疑惑)、オーストラリアで男になる。ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ。

 

***

このお話のタイトル(邦題)はバイオハザードなんですが、これ、皆さんの良く知っているCAPCOMのあのゲームに由来しています。ゾンビゲーです。

何故、「弟はホモだったが、今はナニ魔人」という話からゾンビが出てくる話に繋がるのかというのが今回の本筋です。

 

かつて、わななきアンケート「今後読みたい話」でうちの父と人気を二分したのが弟を主役にした話だったのですが、キチガイオヤジの方が登場済みで扱いやすかった為、弟の話にはほとんど触れてこなかったのです。

また、弟にまつわる話は全年齢対象にならない事案が多すぎるため、私が避けていたというのもあるのですが、気が付けば連載開始から半年が経過し(はてなブログでは二週間)、季節は夏真っ盛り(2018年8月6日現在。外気温36度)。

夏といえばホラー。ホラーといえばバイオハザードバイオハザードといえばゾンビ。ゾンビといえばうちの弟

という何とも安直な連想により今回のお話を執筆する運びとなりました。

 

なお、このお話は極めて不快な描写や残酷なシーンが含まれますが、閲覧は自己責任でお願いします。それでもかまわないという真のわななきすとたちは、続きをお楽しみください。

 

***

 

ナニ魔人となったうちの弟は、その青春エネルギーのほぼすべてをナニに使っていたのだと思う。

積み上げられたエロ雑誌の冊数からしても、ゴミ箱の中身にしても、常軌を逸していたというのが私の感想だ。後ろにいた妹はその空間に居ることすら苦痛のようで、気が付いたら居なくなっていた。

弟に階級を与えるとしたら准将くらいが妥当だと思う。ナニ准将

まぁ、私もエロチシズムは概ね好物だったので、エロマンガ雑誌の一冊を何気なく手に取りパラパラとめくってみた。別に普通のエロ漫画だ。ぶっちゃけていうと亀仙人が出てくる薄い本や、ドラクエ4の薄い本(いずれもカタリナ所有)の方がよっぽどエロい。まぁ、わたしのことはどうでもいい。

 

生まれてからジェシカと致してしまうまでの約16年間、放たれたことのない劣情がそうさせたのか、オンナ嫌いグラフが反転して大好きに振れてしまったのか定かではないけれど、この時は私も弟の内に秘めた狂気を感じた
katharinars3.hatenablog.com

 

この日以来、私は弟とろくに会話することもなく月日が流れてゆく。

 

***

 

6年の月日が流れた。弟は大学を卒業して、浪人することもなく就職したという話だけ母から聞いていた。当時私はというと、今の旦那と同棲し始めて、正直なところ実家のことなどそれほど顧みていなかったため、弟のことなど1ミリも気にかけていなかったのだ。

就職氷河期と言われている平成大不況の時代に就職浪人することなく職に就けているのだから問題ないじゃないか。それくらいにしか思っていなかった。

 

ある夏の午後。外はうだるような暑さ。夜勤で働いていた私は、その日は冷房の効いた室内で旦那と寝ていた。傍らには良太郎(猫)が身体を丸くして寝息を立てており、時折旦那の手が私の貧乳に伸びてくるのを抓ったりしながら微睡んでいたのだ。

携帯電話の着信音がけたたましく鳴る。夢うつつにディスプレイを見ると「母」の文字。

母が私に連絡してくるのは珍しい。身内に不幸でもあったのだろうか。一瞬いやな予感がした。

「はいはい?」

「あ、お姉ちゃん?今大丈夫?」

いつもの母だ。切羽詰まった様子は特に感じない。

「んー、まぁ夜勤明けで寝てたけど平気。どうかしたの?」

「ああ、ごめんね。起こしちゃったね。えーと、あのね、次のお休みに一緒に私と水戸に行ってほしいんだけど」

「へ?」

水戸というのは茨城県水戸市の事だろうか。納豆で有名な、黄門様で有名なあの水戸市の事だろうか。何ゆえに?

「いや、え?いいけど、水戸に何しに行くの?旅行?」

半ば寝ぼけていた私の頭では情報を整理して受け答えすることができない。

「違うのよ、実はね…」

 

母の話の内容はこうだった。私も母も長話が好きな故に、時系列が飛び飛びになることが多いので、会話は省き時系列に沿ってお話しする。

 

一年半前。弟の大学の卒業式に母が出席した時の事だ。

式も終わり、謝恩パーティが催される中、母は弟から一人の女性を紹介される。

弟と同じゼミ生でひとつ年上の女性だ。派手な顔立ちの女だったそうな。物腰はまぁまぁ柔らかく、一見すると普通のお嬢さんのようだったと母は言う。名はヒカルというらしい。母が驚いたのは弟が放った次の一言である。

「ヒカルの実家、水戸なんだけど、就職先も地元なんだよね。だから俺も水戸に行くから」

母は目が点になって絶句したという。

 

そう、この時点では弟は就職先など決まっていなかったそうなのだ。いや、もしかしたら内定の一つくらい取れていたのかもしれないが、都内か千葉県内か知らないが、このヒカルと離れるのが嫌で蹴ったのだ。そして、彼女の実家にほど近い地で就職先を見つけようというのだ。

弟のあまりの愚かな選択に、めでたい場であるはずのその空間を重苦しい雰囲気が支配していた。

「うわー、うちの弟、オンナの事になると盲目まっしぐらなのね。っていうか、その女と添い遂げる気なのかもしれないけど、問題は相手がどう思っているかじゃない?」

私はそこまで聞いて母に思ったことを投げかけてみた。

実際、相手もうちの元ホモと結婚まで考えているのであれば問題なくもないが、その気もないのに実家の近くに陣取られたりしたら不気味じゃないだろうか。わたしならいやだな。

「そこがまた問題なのよ」

母が続ける。

あの愚弟、すでに部屋まで決めて引越しの段取りまで付けてしまっていたのだ。卒業後3日ほどで実家を出ていくと宣う弟。もはや止めるすべはなかった。しかし、引っ越し費用にしても家財道具にしても、サクッと出せるほど弟が貯蓄しているはずがなかった。

ファミリーマートで夜勤のアルバイトをしていたが、キングど田舎シティのアルバイト賃金などたかが知れている

姉が出て行ったあと、好き勝手に振る舞い、毎月何本もゲームソフトを買っていたような弟が貯蓄なんてしているわけがないのだ。

訝しんで母が突っ込むと、悪びれる様子もなく愚弟がゲロった。その一言が母を怒りのアフガンへと変貌させてしまうとも知らずに。

 借りたアパートは敷金ひと月分・礼金なしで格安の6畳ワンルーム。バイト代でどうにでもなった。実家から持っていくものは服だけで、他の荷物は置いていく。布団一式?ヒカルの実家がくれた。必要な家財道具は向こうで買い足す。その費用?ヒカルの実家が出してくれる

 

f:id:katharinaRS3:20180807114919j:plain

(怒りのアフガン)

 

母は心底、腸の煮えくり返る思いがしただろう。両親には何の相談もなく決まっていたこと。ほぼ事後承諾となっていたこと。そして何より、相手の実家に金銭的なものも含めて相当の借りを作ってのスタートだということ。

どうやらヒカルの実家というのはかなりのお金持ちらしく、ベンツを軽トラックかのような感覚で扱っているようだった。

母が一番気に食わないのは布団一式をプレゼントされたという部分だ。

「布団一式なんてうちから持っていけば済むことなのに、相手の実家が出すなんて尋常じゃないわよ。確信はないんだけど、婿養子にでも取ろうとしてるんじゃないかしら

家に帰った母は、何度も弟を説得しようと試みたが弟は頑としてそれを受け入れなかった。

父はというと、男が決めたものだから一回くらい挫折して帰ってくるくらいが丁度いい、とか訳の分からないことを言って放任主義全開だったそうで話にならない。ほんとアタマおかしい

喜んでいたのはここ20年間まともに口をきいたことがない妹だけだったそうだ。

かくして、弟は実家を出て水戸市で暮らすこととなった。程なくして水戸市内の個別指導塾のマネージャーとして就職した、と母に連絡があった。

ここまでが1年半前のことだ。

 

「でね、去年はお盆に帰って来たんだけど、今年は正月も帰ってこなかったし、こっちから電話しても繋がらないのよ。お盆も帰ってくるかわからないし。どうしようかなって思っていたところに、ヒカルから手紙が来たのよ。うちに」

「ヒカルから?実家に?」

「しかもね、書いてある内容がおかしいのよ」

「どゆこと?」

「……弟君から連絡があったら、私に連絡していただけるようにお伝えください」

「え?」

この1年半の間に、弟とヒカルは別れていた。大学1年の頃から付き合いだして4年間喧嘩することなく歩んできたのに、いざ大学を卒業して半同棲状態になった途端に破局

手紙からでは詳細なことは何一つわからないが、とにかく別れたらしい。

問題は、弟に連絡が取れないという部分だった。女にフラれたくらいで、と思われる向きもあるかとは思うが、うちの弟はもともとコミュ障の元ホモだ。ジェシカと致してしまってからは多少コミュニケーションできるようになったようだが、元来持つ性質はかなり陰鬱なやつなのだ。女にフラれたくらいでも病気になれる弱っちい人間なのだ。

とはいえ、ヒカルに固執して水戸で暮らすようになったのならば、ヒカルにフラれた今、水戸に残る理由はない。弟をキングど田舎シティに連れ戻すチャンスだ。

無職になるのは残念だが、地元で再就職したらいい。婿養子に取られる結末よりは随分マシだと母は考えたらしい。弟のアパートの住所はわかっている。直接突撃して、少し強引にでも連れて帰ろうというらしいのだけれど、道も分からない上に、知らない道を一人で運転していくのは怖いし心細い。そこで、シルビアS14からデミオスポルトに乗り換えたばかりの元・峠の狼リナに白羽の矢が立ったのだった。

「お姉ちゃんの運転なら安心して乗っていられるし、道中も退屈しないし、弟を強引に引っ張りだすのにも役に立つし」

というのは母の談。

仕方なく私は母に連れ立って水戸市へと赴くことになった。

 

***

 

千葉県より北の方とはいえ、夏の暑さは全く変わらない。キングど田舎シティを出発してから水戸に到着するまでの3時間、母は私に積もり積もった愚痴を聞かせ続けていた。この間電話口でこぼしたものとほぼ同じ内容だったけれど、肉声での愚痴はもはやヒカルに対する呪詛のようだったが、もともと明るい性格の母なので時折冗談を挟みつつ、私がうんざりしないように気遣いながらというのも見て取れた。

 

事前に道を調べておいたおかげか、特に迷うことなく弟の住むとされるアパートにわたしたちは到着した。

 

途中、山奥の抜け道を通ったり、混み合う国道を避けたり、広域農道を飛ばしたり、とドライブ感覚で運転して、努めて陰鬱な気持ちにならないようにと試みたが、いざ弟の部屋の前まで来ると、母の表情も強張っていた。

 

弟の部屋は2階の外部階段から見て一番手前の角部屋だ。階下の駐車場を見ると、弟の軽自動車が停まっている。随分薄汚れているが、間違いない。

部屋のドアの前に立ち、母がチャイムを押す。電子式のインターホンではなく、おそらく電池で作動するベル式。

 

—―反応がない。母が再度ベルを鳴らす。

二度――。

三度――。

 

私はドアノブに手をかけ回してみた。が、やはり鍵はかかっているようだ。

オンボロではないが、安いアパートだ。中で人が動けば家鳴りがしたり、衣擦れの音が聞こえたりしそうなものだが、部屋からは完全に無音。辺りの蝉の鳴き声しか耳に入らない。

一瞬、弟は出かけているのではないか、とも思ったが、そんなわけはなかった。彼の車が置いてあるからだ。

水戸市茨城県の中でも栄えている都市だが、弟の部屋がある地域は徒歩圏内にそれといった店もなく、車がなければどこにも行けないレベルだ。奴は中にいる。

しびれを切らしたのか、母が弟の名前を呼びながら扉を叩き始めた。

10分くらいそうしていただろうか。

「おたくさんたちは弟君のご家族の方?」

弟の名を呼ぶ母の声が聞こえたのか、ひとりの老人が階下から外部階段を上がってきていた。彼は大家さんのようだ。アパートの裏手に居を構えていて、家賃は直接手渡しで彼に支払うことになっているらしい。

 

少し様子がおかしかったので来てみると弟の部屋の前で騒いでいる女が二人。弟の名前を呼んでいる辺り、家族と思って声をかけたとのことだった。

大家さんの話を聞いて、母の表情が再び強張った。

弟は先月分の家賃を滞納していた。先月に、訳あって期限までに支払うことができないが、来月必ず支払うとの口約束をしてあるとのことなのだが、ここ一週間仕事に出かけるところを見ていないという。というのも、大家さんのお宅はこのアパートの真横に隣接していて、車が出入りするところは全て居間から見えるというのだ。ゆえに、弟の車がここ1週間動いていないことからも、弟は職を失ってしまったのではないのだろうか、と心配していたのだそうだ。

母も、こちらから電話をかけてみても出てくれないこと、心配になって様子を見に来たことを伝えた。

私はその横で、最悪の事態を想定していた

あいつ、死んでるんじゃないだろうか、と。

 

さすがに母に「死んでると思うよ」とは言えなかったので、「緊急性が高い気がするから大家さんから鍵を借りて扉を開けてしまおう」と提案した。大家さんも快く承諾してくれて鍵を取りに自宅に戻った。

10分もしないうちに彼は鍵をもって現れたが、見知らぬ中年男性を引き連れてきた。

「こちらは?」

「不動産仲介業者の担当さんだよ」

なるほど、不動産屋さんもこの近くにあるらしく、大家さんが気を回して呼んでくれたのだ。

男手があると何かと助かる。グッジョブ大家さん。

 

持ってきた鍵を鍵穴に差し、ゆっくりと回す。特に抵抗もなくあっさりと鍵は開いた。私はドアノブを回し、普通にドアを引いた。

ガン、という金属音が鳴り、ドアは途中で停止した。内鍵フックが掛けられていた。

 

つまり、弟は中に居るのだ。

 

増々、私の嫌な予感が膨れ上がる。必死で中に居るであろう弟に声を投げる母。

事態におろおろし始めた不動産屋さんと大家さん。割と冷静なのは私だけのようだった。

 

「これ(内鍵)って外から壊せないんですか?緊急事態ですし、壊していいですよね?」

「えっ?あ、そうですね!ちょっと事務所から工具持ってこさせます」

携帯電話を取り出し事務所に掛ける担当者。

 

程なくして職人風のオジサマが現れる。おそらく不動産事務所付きの内装担当なのだろう。金鋸をつかって内鍵のフック部を切断していく。3分も経たぬうちに内鍵は外れた。

 

まず最初に大家さんが部屋に入る。

「うわっ」

大家さんの悲鳴が聞こえる。この時点で私の予感は的中したと確信していた。奴は死んでいる

 

担当者、私、母の順に部屋に入る。

入室した瞬間、私は絶句した。

 

ゴミ屋敷だ。見渡す限り足の踏み場もないほどゴミが散乱している。散らばった雑誌、流しに積み重ねられた食器。無造作に床に打ち捨てられているコンビニ弁当の容器。いたるところにペットボトルが転がっている。こんな部屋で過ごせと言われたら私や母ならば半日と持たないだろう。そんなゴミ屋敷だ。

 

そんなゴミ溜めの中央に、それはあった。

 

正座して、肩を落とし、頭を深く垂れて微動だにしない弟がそこに居た。

あれだけ外で大騒ぎしていたのにも関わらず、部屋の真ん中で微動だにしない弟

f:id:katharinaRS3:20180807114816j:plain

 

『あ、ダメだわ、これ死んでるよ…』

 

もう冷静ではいられなくなって理性が何処かへ行ってしまったのか、私の口から本音がポロリと出てしまった。

 

「やだ…」

 

母はその場に膝から崩れ落ちすすり泣きを始めた。

せめて生きてさえいてくれれば、母がこんなになることは無かったのにな。何の相談もなしに、いきなり逝かれたらそりゃお母さんだって耐えられないよ…。

 

大家さんと不動産屋さんは唖然として立ち尽くしている。

 

…見ろよ、この有様を。あんたがコレを引き起こしてるんだよ?そう思うと、悲しみより怒りが先に込み上げてきて、私は眼前の死体に話しかけた

 

「おい、弟」

 

 

 

「――――っ」

 

 

 

 

ん?今呼吸音聞こえなかっただろうか。

カーテンが閉められ暗い室内では弟の呼吸による肩の隆起などは見て取れないが、私の耳はヤツの呼吸音を聞いた気がした。

 

「おい、弟」

 

呼びかけには無反応だ。

 

「何とか云えよ、親不孝者」

 

殴った。グーパンチで側頭部を

 

人間は意識していても絶対反応してしまう感覚がある。痛覚だ。

カラダに与えられた衝撃は、脳に伝達される前に体のどこかが反応する。脊髄反射というやつだ。生きている限り、これは止められない。逆を言うと、死んでいれば脊髄反射は起こらない。

果たして、弟は殴られた瞬間、肩を一瞬動かし、加えて衝撃で倒れそうになる体のバランスを持ち直した。

 

愚弟は生きていた。まぁ、軽く精神が死んでいるようだから、さしずめゾンビってところか

 

f:id:katharinaRS3:20180807114845j:plain

「お母さん、こいつ生きてるみたいよ。ほぼゾンビだけど」

 

云いながら私は、カーテンを開け広げた。ガリガリに痩せたゾンビが西日に照らされる。陽の光で砂になるということは無かった。

ああ、ゾンビというより、骨と皮のガラクタだわ

すぐさま母は駆け寄り弟の名前を呼びながら肩を揺らした。一緒にキングど田舎シティに帰ろう、と。何度も、何度も。

ついには弟の心のダムは決壊したようで、とめどなく涙が溢れ出した。しばらく声も出さずに泣いていた。

 

「大家さん。申し訳ありませんが、こいつは今日このまま実家に連れて帰りますので、後日改めてご挨拶とお詫びに伺います。滞納しているお家賃に関しましても後日改めてお支払いさせて頂きます。おそらく退去という方向になるかと思いますので、不動屋さんもよろしくお願いします」

 

私は早口にそれだけを伝え、部屋の隅っこに移動した。

ここでわたしまで泣き崩れたら、収拾がつかなくなる。タバコでも吸って心を落ち着かせたかったのだ。

 

…泣いてなんか、いないんだからね。

 

(つづく)

レジデント・オブ・イービル(前編)

 

私は彼を子供のころからホモだと思っていた。

全く女子に興味を示さない。それどころか、それまで男子とニコニコと遊んでいたにもかかわらず、女子が近付いただけであからさまな嫌悪感を表情に出すのだ。

「俺に近寄るんじゃねぇ」と幼少期の彼の眼は語っていた。もはや、女子が苦手とかそういうレベルの話ではなく、彼の場合はヒトのメスは敵だったと思う。男の敵。男の子はみんな友達。女の子は人類の敵。そんな妄執に駆られていたのだ。まだ腐っていなかった頃の私は彼の異常なまでの女子嫌いに、こう結論付けていた。あの子はホモだ

誰かといえば、隠すほどの事ではないけれど、我が弟の事だ。4歳離れた私の弟。

女児が生まれやすい家系である我が家の待望の長男というやつだ。

過去のわななきを読み返せばそのうち登場すると思うけど、ガンダムにドハマりして女子らしくない育ち方を懸念されていた私を、すべての元凶であるの元から引き剥がして、代わりに生贄として差し出された(生み出された)というのが、弟がこの世に生を受けた理由だ。母にしてみればメシアに見えたことだろう。
katharinars3.hatenablog.com

父により英才教育(ヲタクの情操教育)を施された我が弟、小学校に通う頃にはすっかりインドア派の引きこもり体質になっていた。

幼稚園児のころも狭いコミュニティで遊んでいたようだし、話を聞いても友達3人しかいなかった模様。

心を開いた女子って、母と私だけなんじゃないだろうか。

一歩育て方間違えたら34歳無職ニートとかになって家を追い出された日にダンプに轢かれて異世界転生とかしちゃいそうな勢いの、それはそれは暗い少年だった。

mfbooks.jp

熱心なわななきすと諸氏諸兄ならばご存知の通り、私は小学4年生までを祖母の家で過ごし、そこで頭のイカレタ保健医に開発され腐女子となった。5年生の春から今の実家がある新興住宅街の小学校に通うのだが、弟はそのとき小学1年生。

生活環境も激変し、ここからならまだ間に合う、と母も期待していたのだ。つまり、幼稚園に通う3年間ですっかり女子嫌いになってしまった弟をまっとうな道に戻すには今しかない、と思っていたようだった。

けれど、時すでに遅かった

 

***

 

ある日私は学級の用事で1年生の教室に行かなければならなかった。1年生といえば我が弟がいる学年ではないか。そうだ、ここはひとつヤツの学校生活を覗いてやろう、と思いワクテカしながら足を運んだのだけれど、そこで観たものは目を覆いたくなるような現実だった。

うちの弟が女の子を泣かしているしかも物理で

具体的に言うと壁ドンしてた。悪い意味で。

 

うちの弟は、姉のわたしがいうのもなんだけれど、少々頭がおかしい

口数は少ないし、趣味はTVゲームだけだし、外では遊ばないし、女子が嫌いホモだけれど、善悪の区別がつかぬほどバカじゃないし、相手の嫌がることを積極的に行うような害人ではない。

うちの父も頭はおかしいけれど、子供たちには幼いころから善悪の区別について熱心に躾けていたように思う。

ところが、その時わたしの目の前にあった光景は、そんな父の熱意を嘲笑うかのように鎮座しておられた。弟は今にもその女の子の首を絞めそうな勢いだ。

『何やってんだコラァ!!』

私は咄嗟に弟に駆け寄り、その横腹を蹴り飛ばした。ヤクザキック

f:id:katharinaRS3:20180803084703j:plain

ヤクザキック

当時小柄だった弟は2メートルくらい飛んだ。やりすぎだった。

突然の闖入者に騒然とする1年生の教室。

吹っ飛ばされた弟に駆け寄る同級生たち。

何が起きたのか分からず、一瞬で泣き止んだ女の子。

 

私は女の子に歩み寄りハンカチで涙を拭いてあげた。

温厚かは知らないが少なくとも大人しいうちの愚弟があそこまで激昂するには必ず理由があるはずだ。私はその女の子に事情を聞いてみた。

今度は我が耳を疑ったね。

「私は弟くんのことが好きっていったら弟くんが怒った」

まだ倒れている弟にトドメを刺したくなったね。ジーザス。

何ということは無い。この子はうちの愚弟に恋をしてしまって、漫画の見過ぎかドラマの見過ぎか知らんけど、小学1年にして告白なんぞしたらしいのだ。

可愛らしいやらアホらしいやら。

確かにうちの弟はひいき目を抜きにしてもまぁまぁイケメンですよ。まつ毛なんか1㎝くらいの長さあるし、キレイな二重瞼で、線も細い。

コイツが弟じゃなかったら、と思ったこともありますよ、ええ。

確かに、普通の女の子から見たらカッコイイわな。

ただね、そいつホモですよ多分

そんな話を聞いていると、クラス内にうちの愚弟が好きな子は何人もいるらしい。もともと無口な性分だからな、黙っていればミステリアスな魅力みたいなのを感じられるのかもしれん。でもね、そいつホモだから、多分あきらめた方がいい

女の子側の事情は分かった。乙女チックなお話だったわけだ。聞くんじゃなかった。くそっ。

次に私は肝心の愚弟の話を聞くことにした。

女の子には努めて優しく接したが、こいつには遠慮も慈悲も必要ない。床に座り半泣きの弟の襟首を掴み廊下に引きずり出してから事情を聞く。大体予想はつくけど。

 

***

 

やっぱり聞くんじゃなかった

要約すると、僕は男の子が好き女の子が嫌い。好きとか言われても気持ち悪さしかなかったので泣かせてやろうと思った。

アカン。いつの間にか、こいつ本物のホモになっていたようです。

その頃は私も新天地で腐った会話をできる仲間探しをするくらいには腐女子だったので、目の前にガチホモが現れたことにニヤケそうになりますが、まぁ、こいつじゃ萌えません却下です。キテレツ大却下

さすがに姉としては、まず最初は普通に恋愛してほしいし、長男で我が家で唯一の男児がホモとか笑えない展開になりそう。

多分、幼稚園児のころからこのようにメスをホイホイしているうちにウンザリして今に至るんだろうな、と予想。

女の子は思春期にオトコ嫌いになる人が多い

歪んだ潔癖症というか、男性不信というか、オトコの視線に耐えられなくなるというか、とにかくそういう女子は多い。

オトコ嫌いなのは構わないけれど、自分の殻に閉じこもって恋愛をすることを拒絶し続けるか、自ら殻を破って美しく孵化するか。つまりオトコ嫌いが一過性のものか、持続性のものなのか。

そのどちらなのかでその後の人生が変わるのだけれど、殆どの女子は一過性のものだ。

私はというと小学4年生から倒錯した世界を見てきているからなのか知らないけれど、そういう時期は来なかった。相手も来なかったけれど。多分貧乳のせいだろう。ガッデム。

で、きっと弟のも一過性のものだろうと思い込むことにした。

ホモは女の子が嫌いなのではなく、単に男子が好きなだけだ。

女子に拒絶反応を見せる弟は、きっと一過性だろう、と。

まぁ、彼の女子嫌いはこの後も数年続くので、ひとことに「一過性」で片付けられなかったのはまた、別の話。

で、前置きはこの辺までにしておこう。まぁ、うちの弟はこういう少年時代を過ごしたということだけでも覚えておいてほしい。

 

***

 

これは彼が高校を卒業するころの話。

何の因果か、弟は私と同じ高校に通い、しかも英語コースに在籍という、私と全く同じ道をたどっていた。あの英語コースというところは本当に実用英語に力を入れていたので、コミュニケーション能力のない(というかかなりヒッキーな性格の)弟が無事に卒業できるのか母はかなり気にしていた。

katharinars3.hatenablog.com

 私はその頃はもう大学生活を謳歌すべく実家を出て暮らしていたし、何故か弟とも会話しなくなっていたので、正直なところ彼がどんな人生を歩むかも興味がなくなっていた。

英語コースには修学旅行というものがない。

普通コースと芸術コースの面々は伝統的に京都・奈良・大阪という一般的な修学旅行コースをたどるのだけれど、私たちにはそれがなかった。

その代わり、夏休みを利用してオーストラリア短期留学をすることになっていた。大体ひと月くらいかな。

前半はブリスベンの有名大学の外国人留学者専用の寮に入り、留学生たちと寝食を共にする。昼間は特別にカリキュラムを組まれた短期留学生向けの講義に参加し、全日程修了時にはこの大学の短期留学カリキュラム修了証までもらえる。

これ、普通の高校生じゃ絶対にもらえないからね。いまでも私や弟の宝物だと思う。

で、後半は公募したホームステイ先にそれぞれソロで放り込まれてそこから自力で(バスや電車といった公共の交通機関を使って)大学に通う。

私は9歳と5歳の男の子がいるご家庭にお世話になり、有意義に後半を過ごした。ぶっちゃけそこの子供が64にハマっていたので一緒に遊んでただけなんだけど。まぁ、わたしの話はどうでもいい。

 

弟もご多分に漏れず、後半はホームステイして過ごしたのだけれど、彼はその頃でもむっつりホモだったようだ。といっても昔のように女子を毛嫌いするわけではなく、少し殻を破ったのか知らないが、女子苦手程度のレベルにまでは達していたらしい。

そこで、彼のホームステイ先ですよ。弟が放り込まれたご家庭には弟と同学年の女子高生がひとり居た。名前は確かジェシカちゃんだったと思う。

弟の持っていた写真を見せてもらったことがあるけれど、ブロンドの髪の美少女だ。普通にカワイイ。しかも巨乳

日本だったら「男女七歳にして同衾せず」なんて言って選考から外れそうなものだけれど、そこはオーストラリア。広大な大陸丸々一つの国家。国民も大らかだ。

かくしてうちのホモ疑惑の弟は同年齢の金髪美少女と2週間ものあいだ寝食を共にすることになった。

その間に何が行われたのかは、想像に難くないと思うので端的に。

彼は男になったっちまった。

 

f:id:katharinaRS3:20180803092213j:plain

(ヤっちまった)

帰国した彼は人が変わったようだった。担任(この人も私と同じ担任)の話じゃ、それまで女子とあまり打ち解けていなかったようだけれど、短期留学を通してコミュニケーション力を身に着けた、らしい。

わたしからみたら、男の子の劣情が彼を変えたんだと思うけどな。

 

男になった愚弟はそれまで溜めていた何かを吐き出すように没頭することになる。

何にって?

ナニだよ、ナニ

 

何故そんなことがわかるのかというと、理由はこうだ。

お盆だったか、正月だったか覚えていないけど、実家に帰省した時に彼の部屋に入ったことがある。

恥ずかしながら私は中学3年になった頃から弟に避けられていて、年間で一言二言しか会話していなかった

貧しいとはいえ、外から見て解る程度には胸が膨らんでいたからだと思うが、ホモの彼には私が嫌悪の対象だったのだろうと思っている。

で、当然彼の部屋になんて数年間入ったことなどなかったのだけれど、確か母に言われて、弟の不在を見計らって部屋の換気をすべく窓とカーテンを開けてこいと言われたんだと記憶している。

入室すると、空気が薄汚れているように感じた。というか、臭い

言われた通りにカーテンを開け、窓を全開にする。薄暗い部屋に陽の光が入る。そこで私は部屋のニオイの元凶を特定した。彼のベッドの上に転がっている書籍が目に入ったのだ。

メガストア

快楽天

MUJIN

まぁ、エロコミックですよ。

健全な男子ならば一度は通る道だとうちの旦那も言ってた。

ただね、弟の場合は冊数が半端なかった。週刊誌なのか月刊誌なのか知らないけれど、よく見ると部屋の中に山積みになっていた。弟の狂気を感じた

 

『うわぁ…(白目)』

 

まさに、うわぁ、ですよ。

少し前までホモ疑惑を懸けられていた弟が、今度は肉欲の権化みたいになっていてショックを隠せなかった。

あとから入ってきた(実はいたんだよ、妹)は、道端のゲロか、酔っぱらってガードレールに頭を突っ込んで寝ている新宿のオッサンでも見るかのような蔑んだ目でその光景を見ていた。

f:id:katharinaRS3:20180803101205j:plain

(酔っ払い)

どうやら弟は、そこに至るまでに鬱積した劣情を晴らすがごとく魔人になってしまったらしい。ナニ魔人に。

 

今から16年ほど前の話だけれど、長男がホモではなかったという安心感と引き換えに、なにか大切なものを失った気がするカタリナ20歳のことである。

 

【次回予告】

ナニ魔人になってしまった弟。男にしてくれたジェシカは遠くオーストラリアの空の下。劣情をセルフで処理し続けること1年。大学に入学した彼の前に、劣情を晴らせてくれる女子大生が現れる。初めてできた恋人に歓喜する弟。翻弄する相手の女。4年間で築き上げた男女の恋情は、やがて母を怒りのアフガンへと変貌させる。次回、わななき「レジデント・オブ・イービル(中編)」。邦題「バイオハザード」。さぁて、来週もサービスサービスゥ。

ヒステリックあげるよ

ほんとにってる。マジキチガイの国の人。略してマジキチ

いやね、先日も今日とてJR総武線に乗りまして、いつも通りに通勤していたのですよ。

で、その日の朝は朝五時半くらいから七時過ぎにかけて、千葉県北西部や東京都東部に大雨洪水注意報とか発令されちゃうレベルの局地的な大雨が降っていたんですよ。

 

家を出るときなんて「このまま雨が降り続けたら世界は浄化されてしまうわ…ふふふ…もっと降れ…もっと激しく!すべてを真白に洗い流してしまうがいい…!!」と天使禁猟区ごっこが朗らかにできちゃうくらい降っていたんです。そりゃもう親の仇かってレベルのどしゃ降り。

こんな日に出勤させるとか、会社とはかくも残酷なものかと。まぁ、職場の最寄り駅に着いたら雨は上がっているし、むしろ2時間後にはカラッと晴れていましたけどね。ガッデム!

 

で、私は電車に乗るといつもドアの真横の座席の目の前に陣取るんですけど、電車のドアのすぐわきに、座席との衝立があるじゃないですか。よくそこに寄りかかって電車に揺られている人がいる、あの衝立です。

f:id:katharinaRS3:20180801154904j:plain

総武線車内 赤〇の位置にいつも陣取る)

今日はそこに妙に派手なレインコートを着たオバチャンが寄り掛かっていたのですが、折からの大雨のおかげでずぶ濡れだったわけですよ。

衝立の上に乗っかった形のレインコートのフードから座席の一番端に座っている妙齢のお姉さんの頭上にポタポタと雫が垂れまくっているんですね。

オバチャンが乗車してすぐであれば、多少の雫くらい我慢できようものですけれど、5分たってもポタポタと雫が垂れているわけです。

最初は仕方ないか、と多少困り顔のお姉さんも、気が付いたら腕とか結構ビショっているんですよ。ちょっと怒りのあまり顔が赤くなっていた。

 

オバチャンはというと雫垂れるのなんか全く意に介さないといった感じで、全身から雫を垂れ流しているんですよ。まだそこまで混みあっていない車内。脱ごうと思えば脱げる程度には空いている車内。

レインコートなんて用が済んだらさっさと畳んでしまえばいいだけですが、そうする気配もない。

ボタボタボタボタ垂れ続ける雫まぁ、私から見てもこのオバチャンは少々頭のおかしい挙動をしているなぁ、とは思っていたんです。

最初、雫がお姉さんの左腕に垂れるのを見たはずのオバチャン。なのに、例えばフードを衝立の外、つまりドア側に折りたたんでしまえば少なくともお姉さんの直上から雫がダイレクトに垂れることは避けられるんですけど、どこ吹く風といわんばかりにドアの上にあるモニタでCM見てるんですよね、キラキラした眼で。どう〇つの森みたいな任〇堂提供のクイズとかみてニヤニヤしてた。

多分、そろそろお姉さんもキレそうな形相になって来たな、と思いつつ召喚石ダンジョンとかこなしていたんですけど、4駅ほど過ぎたあたりでお姉さんがついにキレました

 

「さっきからボタボタ垂れてるんですけど」

 

おお、ついに言った!そりゃそうでしょうね。お姉さんの左腕、水掛けたようになってるし、CMを見ようとオバチャンが身をよじった拍子に雫がお姉さんの顔やら髪にもかかってたもの。

これに対して、普通の精神の持ち主だったら「あ、ごめんなさい」とかいいつつレインコートを脱ぐか、フードを畳むか、あるいは場所を移動するかしそうなものですが、生粋のキチガイの精神構造は我々の想像できないものでありました。

 

「は?だったらアンタがどっかいけばいいじゃない!あたしはここがいいの」

 

(リナ ゚Д゚)・・・うわぁ・・・。

 

4駅過ぎればまぁまぁ混み合ってくる車内。お姉さんもせっかく座席に座れているのに、お前が移動しろという人のトンデモ理論が展開されて、何かが壊れたようです。

 

「はぁぁ?!お前がそのレインコートを脱げばいいだけじゃねぇの?!こっちはお前のせいで迷惑してんだよ!がたがた言ってねえでさっさと脱げよババァ」

 

もうアカン。私の目の前でオバチャンとお姉さんのコントが始まってしまいました。というより、動画に収めたいという欲望との闘いが私の脳内でスタート。

 

「ちょろっと濡れたくらいでギャーギャー騒いでんじゃないわよ、餓鬼が」

 

「これのどこがちょろっとなんだよ!見て解んねえのかよ、目ぇ見えてねえのかよババァ」

 

…どうでもいいけど、すごい視線が集まっている…。しかも私は当事者じゃないのに私まで見られている気がします。衝立を挟んで口論を続ける二人。その正面で仲裁をするでもなく召喚石ダンジョンに勤しむ私、という何ともシュールな構図が出来上がっていました。

 

***

 

そういえば、リネレボでもちょっとした意見のすれ違いや、無意識に蒔いた争いの種で個人間の殺し合いが勃発。報復されたことに腹を立て血盟全体を巻き込んでの戦争に発展することだってあるのでした。双方とも言い分には聞く耳を持たず、当人同士で折り合いがつくように一度は設けられた話し合いも決裂。挙句の果てには、あることないことを血盟員に吹き込み、ヘイトが相手に向くように仕向けることもままあるのでしたね。

直接は無関係の血盟員がそれとなく歩み寄る姿勢を見せた時も、その時既に相手がヒステリックラバーになっていた場合、やれ「うちのメンバーたちが殺された」だの「こちらからは手出ししていない」だの、さも非はすべて相手にあると宣い、一切聞く耳を持たなかったりするもんです。報復が報復を呼び、事態の解決には個人間の諍いを捨てて歩み寄らなければならないということには目を向けず、自分中心のトンデモ理論を打ち出し相手を徹底的に貶める。血盟はというと、最後は寄ってたかって一人に罪をかぶせてなかったことにしようとする。個人的なヒステリーが集団ヒステリーにランクアップ。

 

***

いつだったかお話したことがあると思いますが、悪意と害で構成された組織を運営するのは非常に簡単なことです。「同盟以外はすべて敵対組織」「ルール無用のデスマッチ」「何でもあり」好き勝手にふるまい、好きなように害を振りまくことが方針として打ち立てられているならば、催事のスケジュールさえ決めてしまえば構成員のコントロールも不要。集めたヘイトもただの勲章でしかありません。

そのような基地害の集団の中に居れば、おのずと進むべき道は一つとなりますね。の中にあらばに染まるしかないのです。善意など必要ないのです。

残念なことですが、一度朱に染まるともう他の色に染めなおすことができないのです。

***

昭和の昔、1944年のことだったかと思いますが、「死のう団」という日蓮宗系の新興宗教の信徒たちが、集団自決をする事件がありました。何かしらの形で宗教的洗脳が行われたのか、あるいは今でいう集団ヒステリーに陥った結果なのか、当事者全員が亡くなってしまった今ではその精神状態を知ることは出来ませんが、発端となる血盟員が「死のう団」のような集団ヒステリーに陥らないことを願わずにはいられませんね。

 

***

ところで、私の目の前でシュールな罵り合いをしていたお姉さんとオバチャンの争いはその後どうにもならないレベルに達してしまい、誰が通報したのかはわかりませんが途中の駅で駅員さんが乱入してきて騒ぎは落ち着きましたが、そのおかげでダイヤに乱れが生じ、私はというと、本来乗るはずだった都営バスを逃してしまい、盛大に遅刻しました。

 

ヒステリー起こしたオバチャンのせいで電車が遅れて遅刻しました、と出社後バカ正直に上司に報告したところ、「そんな話があるか!」ヒステリックに上司に怒られ、私がヒステリーを起こしそうになりました。

 

今なら死ねるね。

星降る夜に逢いましょう【七夕の思い出】

七夕には苦い思い出がある。

f:id:katharinaRS3:20180731122716j:plain

(キングど田舎シティの七夕祭り)

私が14歳かそこらの若かりし頃、星野君(現・高木ブーとの恋に落ちていなかったので中二の夏だ。

katharinars3.hatenablog.com

通っていた英語塾のクラスメイトの男子とイイ感じになっていたころのお話。

小5から通っていた英語塾でトップクラスの成績を収めていた私は、通常の授業を行うクラスの他に、毎週土曜に学院長が講師を務める特別クラスにも入って4月から通っていた。

通常クラスの講師陣が学院長に推薦しなければ誘われることもない少人数クラスで、生徒のほとんどは幼少期から英語に慣れ親しんでいるようなエリートばかり。通常のクラスとは一線を画した実用英語を中学生の内から学べるクラスで、ここに通っている限りは学校英語でわからないことなど何一つないくらいのレベルだ。その代わり月謝もなかなかに取られるので両親にはかなりの負担をかけていたけれど。

 

そんな特別クラスで私は席が隣の渡辺くんとイイ感じになる。休憩時間中に漫画やアニメの話で盛り上がり意気投合したのだ。

彼は中学男子らしく、週刊ジャンプを愛読しており、当時は幽遊白書が終盤で作画崩壊していたころ。るろうに剣心が連載を開始したころだったか、るろ剣トークが盛り上がっていた。

週刊ジャンプは私と弟、父までもが愛読していて、やれ「飛天御剣流のモデルは侍魂サムライスピリッツ)」だとか「剣心のモデルは河上彦斎だとか、どこにでもいる中学生の会話ではあったけれど、そういうのを20年以上過ぎた今でも覚えている。

 

7月の第2土曜日、講義後に渡辺君が「第4土曜、講義の前半サボってお祭り行かない?」と聞いてきた。

私の故郷は「関東3大七夕まつり」の一つを開催する街だ。毎年7月の第4度金曜から日曜までの3日間、駅前の通りから2キロ離れた市役所前までの商店街を車両通行止めにして出店が立ち並び、商店街の随所でイベントが開催されるお祭りだ。

日本3大七夕まつりと比べるとカス以下の盛り上がりしかないショボいイベントだけれど、遠出することのない中学生レベルだとそれなりに心躍るお祭りなのだ。来場者数だって三日間で80万人を超えるくらいではあるので県内外からも遊びに来る人が多く、関東有数の祭りではあるらしい。ここ20年くらいショボいが

そんな七夕まつりを男の子から「一緒に見に行こう」と誘われた。これって、デートのお誘いなのだろうか。そうに違いない。人生初のおデートだ。二次元をこよなく愛していようが、腐り散らかしていようが、同じクラスの仲のよさそうな男子ふたりで掛け算していようが、私だって女の子だ。デートのお誘いに心ときめかないはずはない。ワクテカしながら2週間後を待ったものだ。

***

当時、私は携帯電話なんて持っていなかったし、それ以前にその頃の携帯電話は鈍器として使用することが可能なくらい巨大なサイズ。デジタルムーバは高価すぎて庶民には手に入らず、一世代前のショルダーホンが主流だったのだ。

 

f:id:katharinaRS3:20180730175453j:plain

家の電話を都度つかうことなんてできないので連絡手段は土曜の塾の講義のみだ。次の土曜には駅前のどこに何時に待ち合わせるかなどの詳細を決めて、デート当日を迎えることになった。7月の第4土曜日。学生は夏休み最初の土曜日だ。私は精一杯のオシャレをして、駅前の訳の分からない水うんちみたいなオブジェの前で彼を待つ。いや、水うんちは言い過ぎた。

 

たしかお昼ちょうどに待ち合わせをしていた。出店が立ち並ぶ商店街を歩くのだから、それなりに食べ歩けるくらいにはお腹も空かせた状態で、渡辺君を待つ。ところが、待てど暮らせど彼は現れなかった。

 

待ち合わせ場所は間違いない。キングど田舎シティと呼ばれる我が故郷の駅前で待ち合わせるとしたら、うんちのオブジェの前か、駅前にそびえたつデパート(現在はただの廃墟)の仕掛け時計の下くらいしかないのだ。とすると、時間を間違えたのだろうか。いや、それもない。昼ご飯の代わりに出店でいっぱい食べようと言ったのはそもそも渡辺君なのだ。その彼が現れない。

何か事故にでも巻き込まれたのか、それとも駅前を闊歩しているチンピラにでも絡まれたのか。嫌な予感が脳裏をかすめる。

30分ほど待っても彼は現れなかったので、私はこちらから彼を探すことにした。うんちの前を離れ、駅の反対側のロータリーをくまなく探す。居ない。

元の待ち合わせ場所に戻っても彼は見当たらなかった。

結局見つからないまま駅前を彷徨い、気が付くと約束の時間から2時間近く経過していた。ほとほと探し疲れて、うんちの前の広場を見渡せるバスロータリーのベンチに座り、ぼけーっとうんちを眺めている私

座って落ち着いてくると、頭の方も冷静になってくる。

そもそも何で私はこのお誘いにOKしたのだったろうか。よく考えたら、仲の良い友達ではあるが、彼の事が好きという訳ではない。仮に向こうが私に好意を寄せていてくれたとしても、わたしはそれを受け入れるだろうか。わからない。

人生初のデートのお誘いだ、ということで舞い上がって二つ返事でOKしてしまったけれど、例えばTVドラマよろしく告白なんぞされたところで多分わたしはOKしない。だって腐っているんだもの

こちらが好きになったのならいざ知らず、相手からのお誘いじゃないか。なんか、こっちが苦労して探そうとしているのがばかばかしくなってきた。

そんなふうに思えてきて、ソロで祭りを楽しむことにした。お腹すいてるし。

キングど田舎シティの駅前商店街から市役所へ通じるお祭り通りは人がごった返している

f:id:katharinaRS3:20180731120509j:plain

(色鮮やかな七夕飾りとごった返す人間)

たかだか1.7キロほどの道のりだが、人混みのせいで歩みは遅い。片道にして1時間近くかかってしまう。色とりどり、趣向を凝らした七夕飾りを見ながらゆっくりと歩く。

300mほど歩いたところで雑居ビル跡地を駐車場にした開けた場所があり、休憩所を設けている。人に酔いやすい性質のわたしはそこで一旦休憩することにした。うん、ソロだと全然楽しくない。

休憩所の周りにも出店が立ち並び、昼間っから宴会を催している赤ら顔のじーさん連中を横目に出店で買ったお好み焼きをもひもひと食べながら何ともなしに休憩所の中を眺めていると、私の目にアリエナイ光景が飛び込んできた。

 

渡辺君が居た。見たことのない女とクレープ食べてた。服装や化粧の仕方から察するに多分2~3歳年上であろうギャルっぽい女とやけに親しげに話していやがる。ていうか、距離がスゲェ近い。鼻の下伸びまくってた。もう祭りの後に連れ込み宿にしけこんで、しっぽり行くのが目に見えるくらいのイチャつきようだ。

ふーん、そっか。あたしよりその女とデートした方が楽しそうだから、あたしのことは忘却の彼方ですか。そうですか。そうでしょうね、その女、乳もそれなりにありそうだし、頭悪そうだし、本能の赴くままに変な棒を出したり挿れたりしちゃいそうなアッパーパーな人物に見えるもの。ちょっと刺激すればすぐに脱DTできるだろうよ。夏だからね、身も心もあそこも開放的になるよね。

確かに私はカラダも貧相ですし、処女ですし、挙句にオタクだし腐女子だしでそう簡単にカラダを許すようなキチガイではないですわ。うん、死ねばいいのに

 

私は渡辺に裏切られたことよりも、ほんの20メートルほど先で痴態を繰り広げるその女に負けたという敗北感で満たされていた。うん、死ねばいいのに

そういえば渡辺は「講義の前半をサボって」とか言っていた気がする。ということは、この女と変な棒を出し入れしたあとしれっと講義に出るのだろうか。その時に私と会ったらどんな言い訳をするのだろうか。

親戚が倒れたとか、具合が悪かったとか子供じみた手を使うのだろうか。これから大人になろうというのに。まぁ、いい。

携帯電話などない時代。リアルタイムに状況を伝える手段がないことにより、ドタキャン(死語)してしまったとしても、その後のフォローが容易かった時代。きっと彼は泣きそうな顔をしながら謝れば私が許すとでも踏んでいるんだろう。残念でした。見てしまったものは仕方ない。黒リナ発動である

私はいつも通りの時間に塾に行った。当然、そこに渡辺の姿はない。きっとあの脳ミソ水うんちのアッパーパーな女としっぽりずっぽりとヤっているのだろう。

特別クラスは何故か女子が8割を占めていた。男子は隅っこで肩身の狭い思いをしていたのだ。

私はその場にいた女子たちに事の真相をぶちまけた。話に尾ひれと背びれをほんの少しつけて。つまり、

「渡辺君にデートに誘われてお祭りを見に行くはずだったが、彼は現れず、リナは泣きながら(この辺が尾ひれ)一人で歩いていたら、偶然アタマの悪そうな女と渡辺君がイチャついているのを発見。会話を盗み聞くとこれからどこぞのホテルにて脱DTの儀式を執り行うらしい(この辺が背びれ)。乙女の純情を踏みにじった渡辺許すまじ(この辺も尾ひれ)

 

クラス中の女子が怒り狂っていた。隅っこの男子はその様を見てガクブルしていたからね。その日はどうやって渡辺を糾弾するかの会議が休み時間の度に繰り広げられた。もはや勝敗は決したようなものだ。渡辺に勝てる要素は一つもない。さようなら渡辺君。貴方の居場所はこのクラスにはなくなってしまいそうだ。まぁ、因果応報だけど。

 

結局その日、彼は現れなかった。そして次の土曜日に現れた彼は、予想通り親戚の不幸という極めて使い古された手を使い謝罪してきた。私は目を閉じて黙ってそれを聞いていたが、ひとしきり彼が話し終えると一言だけ言葉を発した。

『DT卒業おめでと』

「え!?」

私は何の感情も持ち合わせてはいなかったが、クラスメイトの女子たちが堰を切ったように渡辺を糾弾し始めた。

聞くに堪えない罵詈雑言。最初の内は渡辺も「そんなのでっちあげだ」とか「証拠がない」とか反論していたけれど、

『クレープ美味しかった?あの人は高校生かな?胸おっきかったもんね』

と無表情に私に告げられると顔を真っ赤にして俯いてしまった。

彼は荷物をもって教室を後にし、しばらく特別クラスに現れることもなかった。

新学期が始まってから久々に顔を見たが、同時に席替えがあり、隣の席ではなくなったこともあり、その後は口をきくこともなかった。

七夕って牽牛と織姫が年一回、天の川を渡って逢瀬するというロマンティック街道なお話に由来しているはずだけれど、私にとってはそんな何とも後味の悪い苦い思い出になった

 

 

 

 

ところで、私は今も毎年このキングど田舎シティの七夕まつりに出かけている。もちろん旦那様と二人でだ。結婚する前、付き合いだした頃にこの話を彼にしたら、「苦い思い出のままに終わらせるのはつまらないので、毎年楽しみにするくらいの恒例行事にしよう」と、私を連れ出すようになった。

もう12年ほど前の事だ。思い出を消すことは出来ないし、上書きすることもできないけれど、それ以上に楽しい記憶を増やせばいい。

 

今年(2018年)も私は故郷の七夕祭りに出かけた。最終日に出かけたのだけれど、あいにくの台風の直撃のせいか前日のイベントはすべて中止されていたようだった。きらびやかな七夕飾りもそのほとんどが仕舞われてしまっていた。その代わり、といってはアレだけれど、3日目の来場者数は半端なかった。二日目の来場をあきらめた人々がせめて最終日はと、どっと押し寄せたのだろう。

ここ数年、来場者数や出店の数は減少しっぱなしだったけれど、私が子供のころに見たキラキラした七夕祭りの人入りを見た気がした。怪我の功名というやつだ。

相方は終始ご機嫌だった。毎年お気に入りの出店が同じ場所で商売をしているのだけれど、今年も元気に商売していた。毎年恒例のご機嫌伺いをする。また来年ね、と。

あの日、私がするはずだったお祭りデートを、相方は毎年してくれる。だからかもしれない。

今は決して、七夕まつりは嫌いじゃない

 

渡辺君の顔は、もう思い出せない。

【わななき味ゲーレビュー:シャドウゲイト】80年代生まれの思い出シリーズ③

ファミコン黎明期、世の中にはゲームメーカーが乱立した。

まさにファミコン戦国時代

バブル経済真っ只中で、大人たちは好景気に浮かれまくり、私たち子供はというとその恩恵をテレビゲームという形で享受していた。

日本中のそこかしこが未曽有の好景気に沸き返っていた。

今思えば、狂気の沙汰としか思えないお金の使い方をする大人たちが、その後のバブル崩壊によって絶望のズンドコに堕とされる様をまざまざと見せられた私たちの世代。

出典:middle-edge.jp

 無意識のうちに「ああはなるまい」と大人になるにつれ意識改革を進めた結果が昨今の日本だ。相も変わらず好景気はやってきていないけど、危機的状況は脱しつつあり、緩やかに、本当に緩やかに持ち直してきたのは父たちの世代が死に物狂いで踏ん張り、頂上から麓までを直滑降する様子を見せられた次世代がそのときの教訓をもとに頑張った結果なのだ。

で、そんなまだ日本が景気の良かったころにとりあえずゲーム業界に参入しておけば儲かるという、現代で言ったら「仮想通貨で一儲けできる」と同じように、よくも分からずゲーム業界に進出し四苦八苦しつつ、バブル崩壊後には一掃されはするものの、今のメーカーには作れないような隠れた名作(迷作)を輩出するメーカーが多かったのだ。これからお話しするケムコもその一つだ。

 ***

前回、ファミコン本体からコントローラーを引き千切ってリナ家の居間を地絵図に塗り替えた我らが少々頭のおかしい父が、子供たちを泣かせたお詫びとしてゲームショップで弟に買ってくれたのが、ケムコのアドベンチャー3部作の2作目シャドウゲイトだ。

ケムコという会社を知らない人は多いだろうと思うけれど、シャドウゲイトを知らない人は案外少ない。あまりのバカゲーぶりに、ニコニコ動画をはじめ様々な動画サイトで多くの実況者たちにプレイされ、発売から30年経とうとしている今なお愛される名作だ。

今回はこの名作を、当時5歳の弟が開始5分でプレイ放棄したのち、何となく意地でクリアしようとして途中で挫折するリナ、その数年後、T君の部屋で開催されたくそゲー品評会で優勝をかっさらった時の思い出を交えつつレビューしようと思う。

f:id:katharinaRS3:20180728093148j:plain

(図1 シャドウゲイト

パッケージから察するに中央に描かれている左手に松明を、右手に槍なのか杖なのかいまいちわからないオブジェを構えた青年が主人公。

左手の松明を手放さない辺り、防御を一切考えていない脳ミソまで筋肉が詰まっていそうな(愚かそうな)印象を受ける。

中古ショップにて同時に私が父から買ってもらったFF2が純西洋風RPGの装いだったのを見て、弟も無意味に対抗心を燃やしてこのシャドウゲイトを選んだのだと思うのだけれど、そもそもこのゲームはテキストを読み進めていくアドベンチャーゲームで、当時5歳の弟には全く理解の及ばないジャンルだったのだ。

かくいう私もこの手のジャンルのゲームは初めてだったのでゲームが始まった瞬間に目が点になったのを覚えている。

f:id:katharinaRS3:20180728093434j:plain

(図2 タイトル画面)

すべて英語表記されたタイトル画面からして、小学校低学年が遊ぶソフトではないのがありありと伝わってくる。ちっともわくわくしない

ただ、BGMは秀逸。1989年ともなれば、私の愛してやまないKONAMIなんかは独自にカセットROMの中に専用拡張ROMを組み込んでいたりして、今聞いても「カッコイイ」BGMを聞かせてくれていた。サウンドチーム「コナミ矩形波倶楽部」なんて私の世代のファミコン好きなら知らない人なんていないくらい有名だ。

www.youtube.com

www.youtube.com

 

ああ、今回の主役はシャドウゲイトだった。

シャドウゲイトはというと、もともとは米国で発売されたPCソフトを日本ローカライズした作品のため、サウンドのベースがPCなのか知らないけれどなかなか洗練されたサウンドだ(ファミコンにしては)。が、肝心なのはゲームの中身よ、と言われるがままにスタートボタンを押す。

f:id:katharinaRS3:20180728101135p:plain

(図3 最初のセリフ)

弟はもう既にこの画面で固まっていた

私がプレイするFF2の画面を食い入るように見ていた彼が、いざシャドウゲイトをプレイし始めて、ものの10秒でコレジャナイ感がMaxといった顔をして私を見た。

何度でもいうけど、曲はいい。けれど、戦闘が始まるわけでもなく、主人公が表示されるわけでもない。画面下部三分の一ほどを占めるテキスト領域。画面上部右側に表示される見方のわからないアイテム蘭。

f:id:katharinaRS3:20180728101332p:plain

(図4 一人で盛り上がる主人公)

いちいちテキストが長い。後々わかることだけれど、この主人公は冒険者ではなくて、吟遊詩人にでもなった方が良いのでは?と思わせるくらい台詞がいちいち叙情的だ。しかも、この無駄に長い叙情的なセリフがほぼすべての行動に付随してくる。

 

オープニングを要約すると、この主人公は旅の途中で出会ったドルイドの預言者に、「お前は王家の血を引く真の勇者なので、シャドウゲイトに赴き邪神ベエマスの復活をもくろむ魔王ワーロックを倒してこい」と言われ、その気になってここまで来てしまったわけだ。やはりこの主人公、ちょっとアタマおかしい

ちなみにベエマスというのはゲーム内で「最も恐ろしいタイタン」と表現されているけれど、要はベヒーモス(バハムート)のことで、作中では巨大な邪龍として描かれている。

一通りオープニングの無駄に長いセリフが終わって、残される画面がこちら。

f:id:katharinaRS3:20180728101614g:plain

(図5 恐ろしく不親切なUI)

まあ、大人になった今なら何となく下のアイコンの意味も分かるけど、5歳児にはここで無理だった模様。だって、「いどう」って言われても、「移動」の意味が分からないんだもの。

ここまであれこれいじってみたけれど、ドアを「あける」ところで我が弟はそっとドロップアウトした。

これ、つまんない」

彼が発したのは純粋な感想で、悪気も悪意もなかったのだろうけど、珍しく父親が買ってくれたゲームソフトなんだからもう少し粘ればよかったのに、彼はここでカセットを静かに箱に戻した。

その場に父が居なくてよかったと思う。あのキチガイが見て居ようものならば、さに吊り下げられて気を失うまでみぞおちに拳を叩き込まれかねない…。ともあれ、弟に父が買ってあげたシャドウゲイトは購入したその日にリナの持ち物となる。

f:id:katharinaRS3:20180728101827j:plain

(図6 吊るされる弟と喜ぶ父(代理あんぱんとばいきん))

 

しかしそれにしても確かに何とも不親切なUIだ。

知らない人に向けて解説すると、シャドウゲイト「コマンド」と「操作対象の指定」の組み合わせで物語が進んでゆく。

例えば上記のドアを開ける行為にしても「あける」コマンドを選択したのち、対象である「ドア」を選択することで「ドアを開ける」という行為が完結するようになっている。アイテムの使用に関しても「つかう」+「かぎ1」+「対象のドア」という具合で、一つの動作を完結するのに結構手間がかかるのだ。

しかも、叙情的な主人公のおかげか、たかが最初のドアを開けただけで「これが恐怖の入り口というわけか…」などとほざくので、本当に先が思いやられる。

f:id:katharinaRS3:20180728102120p:plain

(図6 恐怖への入り口)

さて、私のレビューなんて読むより、ググった方が詳細な情報を得られると思うのだけれど、シャドウゲイトに限らず、ケムコのアドベンチャーシリーズは所謂「死にゲー」となっている。

選択を一つ間違えると即死の時限爆弾解除方式だ(か的なやつ)。また、随所に散りばめられた罠の数々も、ハマってしまえば即あの世に逝ける親切設計

とはいえ、死んでも直前の状態からコンティニューできるので、時間をかけると必ずどんな下手くそなプレイヤーでもクリアすることができる。アクションゲームのように、何回やっても何回やってもエアーマンが倒せない、などと言うことはないのだ。

その代わり、クリアまでに何回死ぬか数え切れない人が多数、あまりの理不尽な死にっぷりにコントローラーを投げ出す子供が後を絶たなかったに違いない。

シャドウゲイトをレビューすることの9割は、その理不尽な死に様を笑い飛ばすことで構成されるといっても過言ではないと思う。

 

わたしの初めてのゲームオーバーは開始10分ほどで訪れた。玄関の次の部屋、細長い廊下の壁にカウンターのようなものがせり出していて、何やら本が置いてあるので取ろうとしたその時だった。

f:id:katharinaRS3:20180728102642p:plain

(図7 初めての理不尽な死)

落とし穴だ!と気づいた時にはすでに遅し。画像の通り、深い、深―い闇の中へと転落した。そしてそこに横たわる髑髏たちの仲間になるのを待つだけになってしまった(正解は「あける」+「本」でした。くそっ)。

そして、その先に待ち受けるものは、この先シャドウゲイトをプレイするにあたり、幾度となく見させられる画面とテキストなのだ。

f:id:katharinaRS3:20180728102733p:plain

(図8 ざんねん‼ わたしの ぼうけんは これで おわってしまった‼)

 

この死神、この後何度も何度もわたしを迎えに来てくれる。案外、仕事熱心な好青年なのかもしれない。ともあれ、本を取ろうとすれば転落死、梯子を下りれば途中から梯子がなくて足を踏み外して転落死

f:id:katharinaRS3:20180728102853j:plain

(図9 梯子がないと死ぬらしい)

 

バルコニーにおいてある金貨を拾おうと近付くと床が崩れて転落死

f:id:katharinaRS3:20180728102947j:plain

f:id:katharinaRS3:20180728103004j:plain

f:id:katharinaRS3:20180728103109j:plain

f:id:katharinaRS3:20180728103126g:plain

(図10 金貨に目がくらむ「真の勇者」)

 

ボロボロの橋を渡ろうと乗った瞬間崩れて転落死

f:id:katharinaRS3:20180728103247j:plain

f:id:katharinaRS3:20180728103326j:plain

(図11 橋が崩れる。見ればわかるのに)

 

井戸の中を覗いて足を滑らせ転落死

f:id:katharinaRS3:20180728103427j:plain

(図12  足を滑らせて井戸へ)

f:id:katharinaRS3:20180728123440j:plain

(図12-2 着地にも失敗して骨折します)

 

この主人公の死因の半数は転落死なんじゃなかろうか。

死神も、この危機回避能力皆無のアホ主人公が転落するたびに呼び出されて少し可哀想になってくる。転落死だけで何パターンあるのか数えようとしてけど多すぎて止めたくらいだ。

 

さて、ここまで転落死という、ほぼほぼ危険予測ができない事象に殺されてきた自称「真の勇者」だけれど、プレイヤーのせいで死ぬことが結構ある。もう一度コマンド一覧を見てもらうと用途不明なコマンドがあるのだ。

f:id:katharinaRS3:20180728101614g:plain

(図12 セルフコマンド)

「セルフ」…これこそがシャドウゲイトバカゲーの神と言わしめた伝説のコマンドだ。ただし、このセルフコマンドは行動ではない。

説明書には「自分(主人公)自身で考えた末の行動をする」というような旨の記載があるのだけれど、この真の勇者さんは人並外れたバカなので、考えた末に取る行動はほぼすべて死に直結する。

なお、「しらべる」+「セルフ」の結果は下記の通り。

f:id:katharinaRS3:20180728103934j:plain

(図13 真の勇者ですか。そうですか)

 

正解以外の選択肢はすべて死に直結するシャドウゲイト諸刃の剣「セルフ」。この組み合わせでの死に様が数々のゲーマーを笑いという名の恐怖のズンドコに落とすことになる。

一例をあげると「つかう」+「つるぎ」+「セルフ」

f:id:katharinaRS3:20180728104041g:plain

(図14 剣+セルフ)

「私亡き後の世界は闇に包まれてしまうであろう…」

いやいやいやいや、何をどう考えたら自ら心臓を剣で貫くようなバカタレに世界の命運を託すのだろう。

考えた末の行動なら、「私は剣を装備した」が普通でしょJK(ジューシーから揚げ)。冒頭で語られているドルイド預言者の頭がオカシイのか、そもそも予言が大外れだったのか、はたまた目についた若い男全員に同じセリフを吐いてワーロック退治に行かせているのか。

いずれにしてもこんなキチガイに倒される程度なら魔王ワーロックとやらも、その辺のオッサンなんじゃないだろうか。

他にも、

f:id:katharinaRS3:20180728104305p:plain

(図15 斧+セルフ)

 

こいつは刃物を見ると左胸に突きたくなる心の病なのではないだろうか。

f:id:katharinaRS3:20180728104358j:plain

(図16 火かき棒+セルフ)

 

わたしが間違っていました。先の尖ったものは全て左胸に突きたくなる病ですね。訂正します。先端恐怖症ならぬ先端物使用自殺症候群。

ほんと、こいつに救える世界なら私でも救える

 

といった具合に、大抵のものは全て自殺するために用意されたトラップアイテムだ。「つかう」+「セルフ」できちんと装備できるものは

「マント」「メガネ」「銀の手袋」の三つだけ

だったと思う。

因みに、これらを装備した状態で「しらべる」+「セルフ」を実行すると、「わたしこそ しんのゆうしゃだ!!」の後に、

「わたしはマントを身に着けている!!」

「わたしはメガネをかけている!!」

「わたしは銀の手袋を身に着けている!!」

と現在の自分の装備を教えてくれる。なお、この三つを装備した状態がこの真の勇者様の最終形態ドラクエ3で言うと「王者の剣」「光の鎧」「勇者の盾」「聖なる守り」を装備した状態。

f:id:katharinaRS3:20180728105113j:plain  f:id:katharinaRS3:20180728093148j:plain

  (ロト装備)      (これにメガネをかけてマントを羽織り、手袋をする)

比較するまでもなく貧弱だ。

せめて武器の一つくらい装備したいところだけれど、シャドウゲイトに登場する武器は全て装備することができず、使いどころもそれぞれ一度しかない。なお、これらの装備品(装飾品?)は一度装備すると外せない呪いのアイテムなので、最終決戦時の勇者様の風貌はパッケージのイケメン風主人公とはかけ離れたものになっているワーロックから見たらどこのトンチキが遊びに来たのだろうかと思うことだろう。

 

そんな自殺量産コマンド「セルフ」以外にも、プレーヤーの手により自殺を図る方法がある。「いどう」+「画面」だ。ゲーム画面左下の四角いアイコンが移動先を表しているため、大抵の「いどう」コマンドはこれらのアイコンを指定して移動するのだけれど、マウスライクなUIのおかげで画面を直接クリック(?)して移動することもできるシャドウゲイト。これがまた真の勇者をあちら側へ誘う悪魔の操作なのだ。

f:id:katharinaRS3:20180728112854j:plain

(図17-1 湖を直接指定した結果)

湖を直接移動先として指定すると、サメのいる湖(サメは海だろというツッコミは受け付けない)にザブザブと何の躊躇もなしに入っていって自らを餌として差し出す真の勇者。そして断末魔はやはりポエミー

 

f:id:katharinaRS3:20180728112956j:plain

(図17-2 谷底へダイブする真の勇者)

f:id:katharinaRS3:20180728113037p:plain

(図17-3 またお前か!)

f:id:katharinaRS3:20180728113119j:plain

(図18 スライムを直接移動先に)

移動先は何も場所だけではない。

行く手を阻むスライムをクリックすれば同類に。ちなみにこのスライムについては全てのコマンドを受け付けない完全無欠の即死トラップ。回避するには「スライムの入っている棺を開けない」一択

斧で斬ろうが、棒で叩こうが、松明で燃やそうと試みても結果は全てポエミーに即死ドラクエでは最弱のモンスターであるスライムも、シャドウゲイトにおいては最強のモンスターの一角となる。いや、真の勇者が弱すぎるだけなのかもしれないけど…。それにしても「黄泉の国への切符を手にしてしまった。・・・痛みも痒みも伴わずに・・・」ってほんと叙情的。

f:id:katharinaRS3:20180728113355j:plain

(図20 炎の中を移動指定)

シャドウゲイトの数ある死に様の中でも屈指の人気を誇る方法がこちら。

どこからどう見てもクリアしたければ移動先に選ばない炎の中を指定するとこのテキストが。というか、「かーるいす」て……たしかにカールルイスが活躍していた時代だけど、スポーツゲームに登場させるならまだしも、こんな気の狂った死にゲー風情に使われたらカールルイスだって怒るに違いない。当時のゲームプログラマーが病んでいた証拠だ。

f:id:katharinaRS3:20180728113550g:plain

f:id:katharinaRS3:20180728113650j:plain

(図21 マグマダイバー)

挙句の果てにはプレーヤーに対して呪詛を吐いたりする。何がここまで彼を駆り立てるのだろう。

f:id:katharinaRS3:20180728112836g:plain

f:id:katharinaRS3:20180728112813j:plain

(図22 準備体操すれば生きられたかもしれない)

サメも居ないし、と湖に飛び込めば今度は心臓麻痺で昇天する真の勇者。ここまでくると制作サイドが「死に様を笑うゲーム作り」に本気だったのではないかと思えてくる。なお、(図20)の炎の回廊では、火竜が出てくるのだけれど、武器では歯が立たず返り討ちに遭う。

f:id:katharinaRS3:20180728113913j:plain

(図23-1 返り討ち)

剣でも、斧でも、槍でも、銀の矢でも、パチンコでも、王家の杖でも…あらゆる武器が通じない。すべからく返り討ちに遭う。

ここは「サメのいる湖に浮かぶ水晶玉を炎の中に投げ入れると炎が消えて火竜も出なくなる」が正解なのだけれど、ほかにもたくさんのトラップが仕掛けられている。

f:id:katharinaRS3:20180728120719g:plain

(図23-2 あづーっ!!)

せっかく炎を消しても、熱した油の中にダイブしてカラッと揚がってしまう真の勇者。個人的にこの死に方は好き。あづーっ、が。

f:id:katharinaRS3:20180728121820g:plain

(図23-3 松明を近づけると…)

炎を消しても、手持ちの松明を近づけるとあっという間に炎が燃え盛り、引火して火だるまになり焼死する真の勇者。ある意味作り込まれているなぁ、と感心する。死に様だけが

 

返り討ちパターンも豊富だ

 

f:id:katharinaRS3:20180728121929j:plain

(図24 こん棒が脳天直撃)

スライムに勝てないような勇者サイクロプスに肉弾戦で勝てるわけもなく敢え無く返り討ちに遭い昇天する真の勇者。こいつはパチンコで気絶させてから剣でとどめを刺さないとならない。にしてもパチンコで飛ばした小石に当たって気絶とかどれだけひ弱なサイクロプスなのだろう。

f:id:katharinaRS3:20180728122140j:plain

(図25 犬にも勝てない)

この勇者にとって剣はただの飾りなのだ。犬が相手ですら剣では勝てない。この犬は聖水をかけると消滅する。ほかのどのアイテムでも結果は同じく喉笛をかき斬られて絶命する。

f:id:katharinaRS3:20180728122039j:plain

(図25-2 動物と言えば)

あれこれ考える前に逃げるなり倒すなりすればいいのだが、無駄に叙情的な性格が災いして食いちぎられる真の勇者。ほんとにポエマーになった方がいいと思う。

そもそもこんな情緒不安定な男に世界の命運は任せてはいけない。

f:id:katharinaRS3:20180728122410p:plain

(図26 血が騒ぐ真の勇者)

 

城に入った最初の玄関ホールではこんなにかっこいいことを言っていた勇者様。ドルイドに騙されて、王家の血を引くと勘違いして、ありもしない勇者としての血をたぎらせる青年。ここで恐怖を感じて引き返していればその後の惨劇は回避できたのかもしれない。

f:id:katharinaRS3:20180728122508j:plain

f:id:katharinaRS3:20180728123312j:plain

 

(図27 無駄に叙情的な部屋の説明)

 

これもまだ序盤の部屋だけど、この辺からすでに恐怖におののいているはず。

f:id:katharinaRS3:20180728122535j:plain

(図28 死の匂いを感じ取る勇者)

 

f:id:katharinaRS3:20180728122553j:plain

(図29 スフィンクスと対面)

この辺りになると完全に出てくるものすべてに恐怖を感じていて、とてもではないが勇者には見えない。「どうしよう?どうしたらいいんだ?」

私に聞くな

f:id:katharinaRS3:20180728122653j:plain

f:id:katharinaRS3:20180728122705g:plain

(図30 ただの女好きと思われる勇者さま)

「おっ!!いい女・・・。」

女子が絡むだけでここまで叙情的になれる勇者様。苦悩を浮かべた表情はこの上なく魅惑的だ。残念だけど彼はこの後、正体を現した彼女に喉笛を掻き斬られるのだけれど。

そして、時間制限で死ぬこともある。アイテム蘭の左右にある松明のアイコン。これ、時間設定がされていて、経過とともに炎が小さくなってゆく。小さくなった時に新しい松明に火を付ければ大丈夫なんだけど、松明のストックがなかったり、時間までに火を付けられないとこうなる。

f:id:katharinaRS3:20180728123713g:plain

(図31 松明が頼みの綱だった模様)

 

*****

と、駆け足で紹介するだけでもこれほど楽しいバカゲーシャドウゲイト。実はNINTENDO64にて「シャドウゲイト64」という続編を発表している。また、3DSwiiUなどのバーチャルコンソールでも配信されているので、興味がある人は死に様をすべて見たい人は購入してみてはいかがだろうか。

リネージュに疲れた心に一服の清涼剤となってくれるかもしれない。

今回、このわななきを書くにあたり、実に18年ぶりにプレイしてみたけれど、ユーザーを楽しませようとする(この場合は笑わせようとする)要素が盛りだくさんで、この頃のゲームって本当に楽しかったなー、と再認識した。

また機会があれば他のバカゲーもプレイしてみようと思う。それをわななくかは別問題として。

最後に、私が今回のプレイで一番気に入ったシーンの画像を紹介して終わろうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

f:id:katharinaRS3:20180728123113j:plain

(図31 幽霊に怖くて近寄れない勇者)

 

 

 

お前、何しにここへ来た?

 

残念、わたしのわななきは ここで終わってしまった!!

 

 

 

f:id:katharinaRS3:20180728123213j:plain

f:id:katharinaRS3:20180728123225j:plain

一応、エンディング画面。第1話て・・・。

 

【きさまら、はんらんぐんだな!】80年代生まれの思い出シリーズ②

(前回までのあらすじ)

リナとパパ、ファミコンにドはまりする。ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ。
katharinars3.hatenablog.com

 

リナ家の居間に燦然と輝くファミコン、3年ほど稼働した後、1コン側十字キーの右が効かなくなった。理由は明白だった。使いすぎ

横スクロールアクションゲームってほとんど全部左から右へ移動するので、必然的に右キーだけがつぶれるのだ。ただでさえつぶれやすい十字キーだけど、その寿命をがっつり削ったゲームが1989年4月発売のゲームダウンタウン熱血物語だ。

f:id:katharinaRS3:20180727105322j:plain

(図1 ダウンタウン熱血物語

リナ9歳、弟5歳。デビアススーパーモンキーのような理不尽さや、マリオシリーズの正統派なアクションゲームの難易度に涙していた弟もだいぶファミコン慣れしてきて、一丁前に祖母にファミコンソフトをおねだりするようになっていた。5歳とは言えやはり男の子、このころからすでにアウトローなヒーローに憧れていたのだと思う。

***

三十路超えた中年ならば知らない人は少ない(はず)くにおくんシリーズの2作目である本作。

路上を闊歩する不良高校生たちを殴って蹴って、時には道端の木刀鉄パイプチェーンなど不良御用達の武器で殴打し、木箱古タイヤなどを相手のドタマに振り下ろし昏倒したところですかさず所持金を奪い、街でアイテムを購入しプレイヤーキャラである「くにお」「りき」を強化しながら進めていくアクションRPGだ。

f:id:katharinaRS3:20180727111934j:plain

(図2-1 傷害強盗事件。凶器は鉄パイプ)

雑魚ヤンキーたちのセリフや断末魔が楽しい。

「てめえなんか ぴゅ ぴゅ ぴゅの ぴゅーにしてやるぜ」

f:id:katharinaRS3:20180727105708j:plain

(図2-2 ぴゅぴゅぴゅのぴゅー)

「どっくーんときたよー!」

 

f:id:katharinaRS3:20180727110442p:plain

(図2-3 どっくーんときたよー)

「がっくーん♡」

「おたのしみいただけましたか?」

「おかーちゃーん!」

など。

コメディタッチの作品ながら、タイトルは熱血硬派。あきらかに連続強盗傷害事件を起こしているけど、悪を許せぬ正義の番格

不良から巻き上げたお金でコシヒカリを買って生米のまま食べてパワーアップするくにお達。

茶店で出されたフルーツジュースをグラスごと飲み干してパワーアップするくにお達。

高校生の分際で回らない寿司屋にて大トロ(3000円)をお皿ごとバリバリ食べてパワーアップするくにお達。ほんとアタマおかしい

そこまで文字を読めていたのかわからないけど弟はきゃっきゃいいながら不良の断末魔と一歩間違えば死者が出る血みどろの争いを楽しんでいた。

で、この作品、というか「くにおくんシリーズ」のお決まりなのだけれど、ダッシュ移動」というものがあった。これは方向キーを素早く2連打するとダッシュするというもの。くにおくんにすっかりはまってしまった弟が毎日狂ったようにプレイしたため、十字キーの寿命をもりもり削っていった。そしてついには全く効かなくなってしまったのだ。

くにおが右に走れないと泣き叫ぶ弟

十字キーを壊した弟に対して怒りのアフガンと化する私

6畳の和室が絵図になった。

そして、もう一人、十字キーが効かないことに苛立ちを隠せない男がいた。

言うまでもなくうちの父上だ。

お前らのせいで(四人打ち麻雀で)チーポンカンロンできねぇじゃねぇか!という、(だったら専用コントローラがある井出洋介の方で遊べよ)という私の内部処理をよそに、その理不尽さを極めた怒りを子供たちにぶつけるキチガイ

 

烈火の如く怒った父は子供たちの眼前で1コンを本体からむしり取った。さすがの私もこの狂人の所業一瞬目が点になり、あまりの衝撃にそのまま号泣した

まぁ、初期のファミコン本体には外部端子スロットがある。井出洋介の実戦麻雀専用コントローラもそこに差すのだけれど、非正規品コントローラーのジョイカード(通称「連射機」を接続すれば問題はなかったのだけれど、あいにくうちにはそんなものはなかった。

我が子たちが泣き叫び、怒り狂った父ファミコンを破壊する絵図を遠くから見てほくそ笑む母。この家は狂っている

私はファミコンが破壊されたことにより茫然自失し、これでファミコンとオサラバかと思い絶望。ファミコンを買ってもらえないと知った日の夜以来はじめて枕を涙で濡らした。

 

ところがその翌日、冷静になった父は近所のディスカウントストアにて1コンを買ってきた。何故かジョイカードではなくて、正規品の1コンを。

もともとファミコンのコントローラーはキー内部のゴムがへたりやすく、精密ドライバーが一つあればコントローラーだけ分解してゴムを交換できるようになっており、ゲームショップに行けば換えのパーツもたくさん取り扱っていたのだけれど、うちの場合は暴徒と化した父が配線ごと引きちぎってしまったのでコントローラーごと交換を余儀なくされた。さすがに本体の分解を伴うとなると交換は子供では難しいだろうと父が買ってきてくれたのだ。

この男、本体を分解し、引きちぎった配線込みでファミコンを復活させてくれた。当時のわたしから見たら完全なゴッドハンド。

新品のコントローラーでくにおくんをプレイできる弟もご機嫌だ。そして、僥倖なことに、コントローラーを引きちぎって泣かせてしまった罪滅ぼしなのか、ソフトを1本ずつ買ってくれるというのだ。この時は気狂いしたうちの父も、普通のお父さんに見えたね。

 

父と弟、私の3人で街の中古ゲームショップに赴き、ソフトを物色する。

当時1989年、世の中にRPGのビッグタイトルとしてその名を轟かせていたのは言わずと知れたドラゴンクエストDQ)」ファイナルファンタジーFF)」のシリーズで、クラスの友達は連日このビッグタイトルの話で盛り上がっていた。私はというと、スーパーモンキー大冒険以外のRPGは未体験で、クラスメイトの話題に入っていけなくて悲しい思いをしたことを思い出し、その時点での最新作ファイナルファンタジー2(1988年)」を買ってもらった。これが私とFFの出会いだったのだ。

弟はくにおくんのシリーズでほかにゲームがないか探していたようだけれど、残念ながらそれらしきものはなく、なぜかわからないけど私の買った西洋風RPGの雰囲気をパッケージに描いてあるシャドウゲイトを買ってもらっていた。このシャドウゲイト、「Déjà Vu」「悪魔の招待状」に続くケムコ発売のアドベンチャーゲーム3作品の2作目に当たる、キング・オブ・クソゲー

面白すぎてここで語るには惜しいので次回たっぷりレビューするけど、結論から申し上げると、うちの弟にはまだ早すぎて開始5分でパッケージにそっと仕舞われていた。可哀想な弟。結局くにおくんをひたすら周回することになってしまった。

 

で、私が買ってもらったFF2。言わずと知れたファイナルファンタジーシリーズの2作目。

故郷を追われた4人の若者が様々な出会いを経て打倒パラメキア帝国を成すための旅に出るという王道RPGだ。が、プレイヤーが所詮小学校低学年生。主人公たち「フリオニール」「マリア」「ガイ」「レオンハルト」の名前がそれぞれ「弟」「リナ」「祖父」「父」と全員家族に書き換えられた状態でゲームスタート。キャラに対する感情移入もあったもんじゃない。

***

さすがに今更FF2でネタバレするなという人はいないだろうから、みんなわかっている体で話をする。端的に説明すると、ゲームオープニングでいきなり戦闘が始まり、主人公4人が一瞬で全滅する

我が目を疑った。

 

祖父、死す。

f:id:katharinaRS3:20180727114518p:plain

(図3-1 祖父、死す)

弟、死す。

父、死す。

リナ、後方に下がっているためか相手の攻撃を辛くも避けるが、次ターンにクリティカルヒットを喰らって爆ぜる。

f:id:katharinaRS3:20180727114959p:plain

(図3-3 リナ(マリア)爆ぜる)

 

相手の黒騎士4体、実は終盤に登場するような雑魚敵なのだけれど、この時点では絶対勝てない。重傷を負って同じく国を帝国に奪われ落ち延びていたフィン王国の残党に拾われて、帝国に反旗を翻すアルテアという町で弟(フリオニール)が目覚めるところから本格的に物語が始まる。

 

生きて再会を果たす家族たち。ところが、ひとりいない。

 

「フィンのおうじょ たすけた おれたち。 いなかった

f:id:katharinaRS3:20180727114657p:plain

(図3-3 再会を喜ぶ2人の若者と蒸発したらしい父(レオンハルト)。この時の音楽、いまだに聴くと目頭が熱くなる)

どうやらうちのキチガイ親父は蒸発してしまわれたようだ。

幼い私には衝撃だった。お父さん死んじゃったのかな。とか思っていた。

最初の戦闘で受けるダメージが半端なくて体が修復不可能なほどに爆ぜたに違いない。仕方なく弟、祖父、リナの3人で冒険に出ることになる。

 

FF2は現代のRPGと比較しても斬新なキャラ成長システムを採用している。それが熟練度システムだ。

戦闘で使った武器や技術の熟練レベルが成長に直結するシステムで、経験値という概念がない。

敵に殴られてHPが減れば戦闘終了後HPがアップする。剣で斬りつければ剣の熟練度が上がり攻撃力が増す。腕力を必要とする攻撃を繰り出せば「ちから」のパラメータが、魔法を使えば「かしこさ」「せいしん」のパラメータが、というように行動すべてが成長に直結しているのだ。

何の予備知識もなくプレイしていくと、主人公たちは剣、斧、弓をそれぞれ装備しているので戦闘を重ねればそれぞれの肉弾戦のマスターとなっていく。つまり、弟は剣を、リナは弓を、祖父は斧を、という具合に。

ところが、世の中の多くの男の子と違って、私の脳内ではリナ(マリア)こそ主人公。私は弟に槍を、リナからは弓を売り払って剣を、祖父は斧を売り払って素手をそれぞれ装備させる。

そして、魔法に憧れた私は何を血迷ったのか装備していた体防具を売り払って「ファイア」「ケアル」を買いリナに習得させた。

魔法剣士リナにしたかったのだ。

後から一つ年上のゲーマーな男の子にFF2の攻略について聞いてみたら、これ実は結構悪くない選択だったらしい。

通常、ダメージを受けるとHPが上がりやすくなるのだけれど、防具を装備しているとダメージが通らないことが多いので非効率的なのだ。ゆえに熟練の猛者は、序盤は武器一つだけもって全裸で敵陣に突っ込み強制的にHPと「たいりょく」を成長させる人が多いらしい。

魔法欲しさに防具を全部売ったリナの選択は決して間違いではなかったのだそうな。また、「ちから」のパラメータに隠し成長ブースターが搭載されている祖父(ガイ)を素手で育てるのは、序盤はきついが中盤以降は主力として活躍できるようになるのだそうで、成長しきった祖父は後半、ベヒーモスですら素手で殴り殺すような暗殺拳の使い手となる。ビギナーズラックをいかんなく発揮していたというわけだ。

とはいえ、この時点では旅を始めたばかりのリナ一行。序盤のゴブリンにすら苦戦しながら、攻撃力の足りない素手の祖父が何度も死にかけリナに至っては何度か死んでいたけども着実に成長していく。

初めてまともにプレイするRPGの興奮があってか、アクションゲームとは違った残虐プレイがお気に召したのか、ストーリーを進めることなく、ひたすらとエンカウントする敵たちを屠り続けるわたし。気が付くと、序盤の山場といわれる雪原の洞窟を踏破できるくらいまでには成長していた。

なにせまともなRPG初めてなので勝手がわからなかった私、フラグ回収しながらでないとお話が進まないこともよく知らなかったので、友達にこんなに強いのにどうして3人で旅をしているのかと突っ込まれ、言われるがままにまったく進めていなかったストーリー攻略に着手する。

 

そもそもFFはDQを潰すために制作されたと坂口博信氏が明言しているけれど、対抗していたためか偶然なのか、シリーズ構成まで似ているのは有名な話だ。FFはナンバリングの1、3はキャラクター名が決まっておらず異世界転生に近い仕立て。2、4はキャラクターに固有の名前がついており、ストーリー重視で制作されている。

これはDQでも同じで、2はサマルトリアの王子とムーンブルグの王女は自動生成された名前が付くし、4については勇者以外全員に名前が最初からついており、変更もできない。いまは合併しスクウェア・エニックスとなった2大企業も、この頃は水面下でドンパチやっていたのだろう。

 

さて、FF2はこの上なく悲哀の物語だ。コミカルなところは一つもない。

故郷が帝国に占拠され、マリアの兄レオンハルトは最初に行方不明となる。

反乱軍の当主、フィン王国の王女ヒルダの婚約者であるカシュオーン王国の王子スコットは帝国との戦で序盤に命を落とす

f:id:katharinaRS3:20180727131853p:plain

(図3-4 スコットの死)

最初に仲間になる白魔法使いのミンウは一度脱退した後、終盤にて究極魔法アルテマの封印を解くために全魔法力を使い果たし命を落とす

f:id:katharinaRS3:20180727131934p:plain

f:id:katharinaRS3:20180727131950p:plain

(図3-5 ミンウの死)

次に仲間になるヨーゼフはフィン王国を裏切り帝国に寝返ったボーゲンの卑劣な罠からフリオニールたちをかばって岩の下敷きになり絶命する。

f:id:katharinaRS3:20180727132023p:plain

f:id:katharinaRS3:20180727132037p:plain

(図3-6 ヨーゼフの死)

ヒルダの父王は戦の際に負った傷が原因で床に伏せっていたが、帝国の猛攻に風前の灯となった街の人々の悲痛な様子に心を痛め心労がたたり回復せぬまま逝ってしまう

船を提供してくれて一番長く一行と行動を共にしてくれる女海賊レイラリヴァイアサンの起こした津波に巻き込まれて行方不明になる(しばらく後に生存確認できるけど)。

マリアの兄レオンハルトは帝国の幹部ダークナイトとして敵に回っている

飛空船技士のシドは皇帝の魔力が巻き起こした竜巻に巻き込まれ重傷を負い主人公たちに飛空船を託して生涯を終える

f:id:katharinaRS3:20180727133854p:plain

f:id:katharinaRS3:20180727133904p:plain

f:id:katharinaRS3:20180727133915p:plain

f:id:katharinaRS3:20180727133927p:plain

(図3-7 シドの死。FFシリーズお馴染みのシドも2のときはこんなにカッコイイ)

やっとの思いで皇帝を倒し平和が訪れたと思われたのも束の間、蘇った皇帝に竜騎士団最後の生き残りのリチャード虫けらのように殺される

f:id:katharinaRS3:20180727134041p:plain

もうね、最初から最後まで悲劇の連続で、わたしはリメイクしたら一番泣けるのはFF2だと未だに思っている。主要4人以外のパーティメンバーは9割死ぬし、いちいち演出が叙情的。

f:id:katharinaRS3:20180727134150p:plain

(図3-8 人が死にすぎ)

f:id:katharinaRS3:20180727134654p:plain

(図3-9 レオンハルト加入。何この胸アツ展開)

 

DQにはあまり見られない叙情的なストーリー展開にクリティカルヒットを受けて、当時の少年少女たちのご多分に漏れずに、その後のわたしは狂ったようにスクウェアソフトのフリークになる。そして、キャラ名の所以ともなるロマンシングサガシリーズと出会い、おそらく一生使い続けるであろうカタリナを名乗ることとなる。が、それはまた別の話。