腹黒元副盟主のわななき

フリンテッサ鯖「xxxMZRxxx」血盟所属の腹黒い事務員カタリナのリネとは無関係の駄文集

【星野君が好きだった話】

【注意:今回のわななきはいつもと違ってネタがほとんどない駄文ですので、ネタを期待した人はそっと画面を閉じましょう】

 

星野君が好きだった。シャア・アズナブル機動戦士ガンダム)に恋をして、迦楼羅王レイガ天空戦記シュラト)にあこがれて、アナベル・ガトー(機動戦士ガンダム0083)を愛して、吉良朔夜天使禁猟区)に堕とされて、…と二次元の世界に腰までどっぷりはまり(今列挙したシャア以外のキャラクターたちはみんな腐女子の大好物だけど気にしちゃいけない)、現実の男の子ですら掛け算の道具でしかない少女時代を過ごした私が、14歳にして初めてアオハルっぽい気持ちにさせられたのが星野君だ。特に背が高いわけでも顔がいいわけでもない。バスケ部所属だけどスタメンではなかったし、女子の人気があるわけでもなかった。しゃべりがうまいわけでもないし、成績も中の上でバカではないけれどいわゆる「頭のいい」人ではなかった。

家は近所だったけど親同士が仲良いわけでもなく、小学時代なんてまともに口をきいたこともなかった。どこにでもいる平凡な少年。碇シンジみたいな。ただ…ゲームとイラストが上手だった。T君(第2回参照)もゲームは上手かったけど、中性的過ぎてあの人は恋愛対象外だった。

 

katharinars3.hatenablog.com

 

星野君はというと、ゲームのキャラクターをひたすら描くのが好きなタイプで、それこそ画集でも作れるんじゃないかってくらいのイラストのストックがあった。ただひたすらストイックに絵を描き続けていた。

 

彼がイラストレーターを目指しているのを知ったのは、中学2年の文化祭の準備で体育館が使えなくなった数日間のことだった。

 

普段は部活で校舎内にはいない星野君が、夕方まで図書室にいるのを見かけたのだ。うちの学校の図書室は校舎の正面階段を昇ったところ、いわゆる昇降口の目の前に位置しており、通りがかれば誰でも中を覗くことができる風通しのいい部屋だった。

ほかの学校のように校舎の隅っこで人目につかないような湿った場所ではない上に、廊下を挟んで斜め向かいには職員室があったため、めくるめく放課後の情事に使われることもなかったし、訪れる人もほとんどおらず、図書委員も何故かカウンターの中で寝ているという、机の上で何かに集中するにはうってつけの場所だった。

私はというと、ほとんど日替わりで美術室と多目的室、図書室などを私物化して絵を描いたり妄想したり、惰眠を貪っていたりしていた。

その日は美術室が文化祭の準備でほかの学年に占拠されていて、多目的室も演劇の練習をする生徒たちに解放されており、体育館は吹奏楽部のリハーサル、音楽準備室は先輩たちの昼下がりの情事に使われていて(嘘)、私のオアシスが図書室だけになっていた。

図書室の入り口に差し掛かると、窓際の丸テーブルに見覚えのある男子生徒の姿が見えた。星野君だ。珍しく図書室で何をしているのだろう、と後ろから音もなく忍び寄りこっそり覗くと「FF6のティナとセッツァー」のイラストを描いているようだった。え、ナニコレ上手い鉛筆の線画だけでもそこいらの美大生並みに上手い。これは言い過ぎだけど、私が敬愛してやまない絵師小林智美の作品(わからない人は「小林智美ロマサガ」で検索)に系統が似ている。なんてこと。この学校はいかほど絵の好きな生徒がいるのだろう。しかも星野君に至っては先日の美術展には下手くそな絵を提出しているし、小学校時代はサッカー部だったしで完全ノーマーク。例のナオミちゃん(第6楽章参照)くらいの隠しキャラ。こいつの戦闘力は一体どれほどなんだろう。多分新型のスカウターが計測不能でぶっ壊れるくらいの戦闘力を秘めているに違いない。

(けど…こんな繊細な絵を描けるこの人の才能に…憧れちゃうな…。)

『絵、上手いんだね』

気が付くと私は星野君に話しかけていた。誰もいない図書室で急に話しかけられた星野君は、私を痴漢された女子のような目で無言で見返してきた。

しばしの沈黙。

このあと絵に描いたようなアオハルな会話が少しばかりあるのだけれど、あの時は緊張していてうろ覚えな上に、読者様はそんなの読みたくないことと察して、割愛し、結論だけ。

私たちはすぐに意気投合した。好きなゲームや絵師が共通していたし、イラストを描くという共通の趣味もあるしで急速に仲良くなった。

文化祭準備で騒然としている教室を抜けて、私たちは次の日も図書室で待ち合わせてゲームや漫画、イラストレーターについて語り合った。図書室の壁一枚を隔てた廊下は文化祭準備の喧噪であふれかえっていたけれど、私たちには関係なかった。あの空間だけが切り取られて他とはちがう時の流れにいるような錯覚を覚えていた。

今思い返してみても、大人になりたいともがき、だけど大人になり切れていない中学二年のこの時期が一番楽しかったのではないだろうか。

けれど、文化祭が終わってしまえば星野君は部活が再開されるし、美術室や多目的室も解放されるので私は元の自堕落な日常に戻らなくてはならない。

正直、このまま文化祭の準備がずっと続けばいいのに、くらいに思っていた。

そしてその日は来た。

文化祭当日、さすがにサボタージュして図書室というわけにもいかないので、その日一日を暗い気持ちで過ごした。中学高校と6年間でこの年の文化祭ほど記憶に残っていないものはない。なにやら3年生の演劇はコメディタッチのドタバタ学園ものだった気がするが、校内一の美男子と称される先輩が劇中、病院で診察を受けるシーンで、

先生、僕、なんです

と医者役の男の子に美尻を突き出したシーン以外は全く記憶にない。

頭の中は靄がかかったように不鮮明で、明日から星野君と遊べないと思い憂鬱な気持ちで満たされていた。たいていこういう気持ちって時間が少し経てばきれいさっぱりと忘れられるものなのだけれど、振替休日を経て元の日常に戻っても私の心は落ち着きを取り戻さなかった。

その日の放課後も足は勝手に図書室を目指して歩きだし、星野君が居ないことを確認し、文化祭の準備がなんて終わっていることを再認識したときに自分の気持ちに気付いた。

わたしは星野君に恋をしている、と。この時ばかりは腐っていない女子だったね、私は。

とはいえ、特にやることもないし、寧ろ校内に居ても悲しくなるだけなので、仕方なく家路につこうと(私は帰宅部だった)昇降口に向かうと、自分の下駄箱に何やら封筒が放り込まれていることに気付いた。A4サイズの茶封筒で、きっちり封がされている。あて名はない。…はて?訝しみながらもその怪しげな封筒を鞄にしまい、取り敢えず帰宅することにした。

文化祭シーズンが終わると3年生はいよいよ高校受験に向けて準備を始める。私のように帰宅部の下校時刻には3年生の姿が目立つ。中にはカップルと思しき男女が何組かいて、世が世なら末永く爆発しろと言いたくなるところだけど、同時に星野君と自分が同じように歩く姿を想像し、現実と比べてブロークンハートなその時の私の目にはうっすら涙が浮かんでいたと思う。

帰宅しても何もやる気が起きなくて、制服のままベッドに横になり、ボケーっと見慣れた天井を眺めていたけど、ふと下駄箱に放り込まれていた茶封筒を思い出し、開封してみた。

星野君からのお手紙だった

A4用紙の右半分ほどのスペースに手描きのイラスト、左半分が星野君から私に向けた手書きのテキスト。

……文化祭が終わって一緒に遊べなくなってしまうことへのお詫び、図書室での出来事がうれしかったこと、共通の趣味を持つ友達ができてうれしかったこと、その日プレイしたゲームの話……そして、これっきりにしたくないからこの手紙とイラストをかいたこと。できれば返事が欲しいこと。

 

悦びにむせび泣いていた

 

かつてこんなに狂おしい想いをしたことはなかった。ひとしきり泣いて、落ち着いたらすぐさまペンをとり返事をかいていた。こちらも手描きのイラストと手書きのテキスト。とりとめのない話と、私も同じ気持ちでこの手紙を書いているということ。

さすがにあなたが好きです、とは書けなかったから、星野君の絵が本当に好きなことだけ書いて。すべて書き終えると深夜0時を回っていた。このお返事を渡したら星野君はどんな顔をするだろう。

喜んでくれるだろうか、それともまた痴漢に遭った女子のような顔をするだろうか…などと考えているうちに数時間ぶっ続けで書き物をしていた疲れが出たらしく、私は眠りについていた。

 

翌日、私は星野君の下駄箱に封筒を入れておく勇気がなかった。だって、男子の下駄箱に封筒を入れるなんて自殺行為に近い。ハイエナの群れに羊肉を放り投げるようなものだ。万一ほかの生徒に開封されたら、私と星野君の隠してきたアオハルな関係が白日の下にさらされる。

中二の男子生徒なんてそのほとんどが成熟していない子供だ。

面白半分に私と星野君の気持ちを踏みにじるに違いない。

それこそ次々と弟子たちを手にかけていく両刀使いの亀仙人がメインの薄い本のように。

私はあえて放課後を待って、体育棟に向かう星野君を待ち伏せした。

2階へ続く細い外部階段の踊り場で、すれ違いざまに「部活終わったら図書室に会いに来てね」とだけ耳打ちして立ち去った。恥ずかしくて顔も見られなかった。

2時間ほど図書室で時間をつぶすと、校内に部活終了を知らせる放送が流れた。

確か「Up Where We Belong(邦題:愛と青春の旅立ち)」のインストゥルメンタル

果たして、彼は…来てくれた

「はい、昨日のお返事」とだけ言葉を発した私に手渡しで封筒を渡された時の星野君の顔は、多分ずっと忘れない。嬉しそうにも困ったようにも見える少しぎこちない笑顔。捨てられた仔犬みたいな上目遣い。あーもーなんてかわいいんだコンチクショウ。だめだ、わたし、完全に落とされている。

家が近所だったわたしと星野君はその日初めて一緒に下校した。学校から家までの約1キロ、ほぼ無言だったけど。ときめきメモリアルの好感度最高状態の美樹原さん風の下校シーンだった。わからない人は「ときメモ␣美樹原」で検索しよう。

その日から、私と星野君の奇妙な交換日記が始まった。

次の日彼は同じく茶封筒を私に手渡してきた。2枚綴りのイラスト付きお手紙。

私も負けじと2枚つづりで返信…翌日手渡し…といった具合に。

その日あったこと、授業中の話、友達の話、部活の話、好きな漫画の話、好きなゲーム音楽の話、勉強の話etc…。

奇妙な交換日記はそのあと半年ほど続いた。その間は私も薄い本から離れ、我が部屋を所狭しと占拠していた薄い本たちはすべてベッドの下に眠ってもらった。

私は彼にもらった手紙はすべてファイリングして、たまに眺めてニヤニヤしていた。クリスマスもバレンタインもホワイトデーもプレゼントの代わりにちょっと豪華なイラストを交換していた。多分彼だって、私のことを好きでいてくれたと思う。ほんと、後にも先にもこんなにアオハルしていたのはこの時期だけ。

半年間でもらった手紙はA4サイズのファイルブック10冊分ほどの容量となっていた。

 

半年が過ぎた。3年生の1学期が終わり、部活も引退、勉強に本腰を入れるという理由で、次で最後の交換日記だね、という話になったとき、星野君が初めて私の部屋に遊びに来たいと言い出した。部屋に・・・来る??私は舞い上がっていた。小学時代から数えると、男子が我が家に遊びに来ることは初めてではなかったけれど、それはあくまで友達の家にゲームをしに来ていただけに過ぎない。自室にTVを買ってもらえず、ゲームをプレイするなら居間と隣の和室でしかできなかった我が家。当然、自室に男子を入れたことなど一度もなかった。

突然訪問されると困惑するだろうと気を遣い、事前に母上には事の起こりを話した。すると気の狂った我が母君は、娘が彼氏を初めて連れてくると思い込み、大層喜んでいた。尋常じゃないくらい気合を入れて部屋の掃除をしておいてくれたのか、下校して自室に戻ると見違えるほど整頓されたように見える私室。

母も人の親、娘の成長を喜びながら掃除してくれたに違いなかった。ただ、物の配置をいじられすぎて何がどこにあるのかわからないレベルで整理されていたのは問題があるけれど。

お茶とお菓子の用意をして彼の到着を待つ私。もしかしたら密室で二人きりになったことで妙な精神作用が働き、告白でもされるかもしれない。もしかしたら告白どころじゃすまなくなることだってあり得る。ああいけない、妄想が妄想を呼ぶ…。などと一人で悶々としていると、玄関のチャイムが鳴った。

来た!ついに我が部屋に星野君が来た。階段をダッシュで駆け下り玄関ドアを開ける。待ち人来たる。私服の星野君が立っていた。

『いらっしゃい…』

「きちゃった…」

星野君だって緊張しているようだった。そりゃそうだ、私の持つ情報が確かなら彼だって年齢=恋人イナイ歴のはず。あまりガッつかないタイプの彼のことだ。女子の部屋なんて初めてに違いない。けれど、彼も中3の男の子。異性を意識しないことなんてないはずだし、もしかするとこのままリナと接吻のひとつでもぶちかますかもしれないと思えば、お互い緊張して当たり前なのだ。

「お邪魔します」

わたしの部屋へ通すと彼は意外そうな顔をした。

「ものすごい整頓されてる…。毎日イラスト描いてるはずなのにw」

しまった!そうだ、毎日深夜まで絵を描いている私の部屋が、こんなに整頓されているわけがない。盲点だった。

『お母さんがなんか掃除したみたい。わたしも何がどこにあるのか正直わからないやw』

もはや開き直るしかないと思い冗談半分にごまかそうとする私。もはやケーキでも貪らせて話題を変えるしかない。と思った矢先。

「あ、そうだ、この前貸してくれるって言ってたFFmixってCD聴かせてよ」

『エ…』

そういえば交換日記で私が星野君にお勧めして、彼がぜひ聴きたいと云っていたCD、今日貸すお話になっていた…。まずい。どこにあるかわからない。どうしよ。

『あー、お母さんがどこにしまったかわからないな…いつもならコンポのところにあるのに…置いてないし…』

「じゃ、お宝探しだね。さすがにクローゼットとかタンスの中には入れないだろうから、そこのラックかカラーボックスの中じゃないの?」

『エ…』

まぁ、彼は紳士だから、私のタンスの中やらクローゼットの中やらは覗く気など更々なかったのだろうと思いけれど、まだ中学3年生。異性の部屋におけるデリカシーのなさは否定できない。出窓に置かれたCDコンポの横に2段積まれたカラーボックス。彼がその片開戸に手をかけた瞬間、中にあったものが飛び出します。

 

ドサドサドサッ。

 

 

 

「あ」

 

 

『あ』

 

 

 

 

 

 

 

 

【過激な霊長類(幽遊白書薄い本】

 

せめて、何がどこにあるのか私が把握できていればこんなことにはならなかったはずなのだけれど、気の狂った母上がそれこそ狂ったように掃除したおかげで私の薄い本たちは普段ならベッドの下に眠っているのだけれどすべてカラーボックスの中に収納されていた。

ほんと、光の速さで言い訳を考えたけれどいい案は浮かばず、薄れゆく意識の中で私は思った。

 

ああ、この恋、終わったな、と。

しかもまた、オスとオスの狂宴とともに…

 

 

その後はお察しの通り、沈黙が私の部屋を支配し、1時間も経たぬうちに星野君は帰っていった。その後もなんとなくぎこちない関係のまま時は過ぎていき、高校が離れ離れとなった後、彼と会うことはなかった。

すべては泡沫(うたかた)の夢だったのだ…。

 

 

 

*******

 

そんな泡沫の夢から覚めて20年。昨年、中学校の同窓会が催された。私はあまりそういう集まりには参加しないのだけれど、その年は結婚もしたし、報告することもあろうかと、久々に顔を出した。会いたい顔がいないわけでもない。ナオミちゃんの事前情報によると、星野君も参加するらしい。この女、ほんとに鋭い。

20年の歳月は人間を成長させるし、成熟させる。けれど、古い仲間の再会というのは20年の歳月を飛び越えて私たちを中学時代へと連れて行ってくれる。

実に20年ぶりに星野君に会うと思うとやはり胸が痛んだ

あの後ぎこちなくなっていたけど、実際のところ彼はどう思ったのだろう。わたしのちょっと切なすぎる初恋の人。イラストレーターにもなれて、きっととっくに結婚していて、かわいい奥さんと子供たち、慎ましやかだけど幸せな中流家庭を築いているに違いない…。今ならあの時の話を笑い話にすることができるのだろうか…。などと悶々としながら会場で待っていると

「オー星野!」という男子の歓声が聞こえ、反射的にそちらを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

若かりし頃の高木ブーさんがそこに居た。

雷様を演じているときのブーさんが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのとき、私は思ったね。

ああ、この恋終わった(2度目)…と。