腹黒元副盟主のわななき

黒い砂漠デネブ鯖『アークエンジェル』、リネレボフリンテッサ鯖「xxxMZRxxx」血盟所属の腹黒い事務員カタリナのリネとは無関係の駄文集

【瞬間、心腐れて】

これは薄い書物を読み耽るだけだったわたしが、読むだけでは飽き足らなくなってしまった頃のお話。

 

それはまさに青天の霹靂。当時のわたしにはあまりにも唐突で、残酷な現実。

 

ゆかりちゃん(第4章後編参照)とともに腐り道に落ちた私に、思いもかけない出来事が降りかかりました。腐女子として覚醒した小学4年生の3学期末。私は両親に転校を伴う引っ越しの話をされます。

時はバブル末期、うちの父上は念願のマイホームを手に入れました。分譲ではあるけれど、庭付き一戸建て。同市内の外れにある広大なリゾーン。いわゆる新興住宅街というやつです。

本当は前年夏に購入は終わっていたのだけれども、年度の途中で転校を強いられるリナの心中を慮って、年度末に引っ越しを設定した両親。ちょうど弟も来年度から小学1年生となるし、タイミングは今しかないと思ってのことだったそうですが、薄い本談義ができる友達がゆかりちゃんと保健医しかいなかった私は当時それなりに落ち込んでいました。とはいえ、新しい学校に行けばあらたな戦友に出会えるかもしれない。そう自分に言い聞かせ、小学5年生の春から新しい学校に通うことになりました(ちなみに保険医からは餞別にBL小説3冊セットもらいました。アタマおかしい)。

 

転校初日、担任から自己紹介を促され、まさかやおい本を読むのが趣味とはいえず、「趣味は読書です」などと当たり障りのない挨拶をかわし、好奇の目で私を見る連中の様子を伺います。

 

「なんだこいつら」

 

が第一印象でした。学生時代に新興住宅街に引っ越し経験がある人ならわかるかもしれませんが、県内からいろんな人が集まるのが当時の新興住宅街でした。

育ってきた環境も違うし、地元愛みたいなものも皆無。とくに私の学校など開校2年目。言ってしまえば、転校生だけで構成された学校なのです。

転校を伴わないで6年間同じ小学校に通えば、仲良しグループ派閥のようなものが構成されて、大なり小なり諍いが生ずるものですが、ここにはそれがない。全員が転校生だからなのか、みんながみんな仲がいい。いじめなんか皆無。妙にフレンドリー。全員がキラキラしてやがりました。眩しい…眩しすぎる

腐女子というダークサイドに堕ちてしまっていた私には、屈託の全くない彼らの笑顔が眩しすぎて目を背けることしかできませんでした。

この先が思いやられる展開。この中から薄い本談義に花を咲かせる戦友を探すのは無理なんじゃなかろうか…。初日にしてそう思わされました。こんなことなら両親と離れ離れになってもスラム街のようなあの町に祖父母と住んでいればよかった(以前は祖父母の家に間借りして住んでいた)。などと悶々としているうちに、その年のクラブ活動を決めるアンケートが担任から配られます。前の学校では文化部が吹奏楽部しかなかったため仕方なくミニバス部にいたリナ(ほとんど見学)。今度の学校はどんなクラブがあるのかな、と一通り目を通していくと、文化部のラストに燦然と輝く文字が。

「漫画・イラストクラブ」

もうね、音速でここのクラブに決めていましたね。活動内容とかどうでもいい。活動と称して薄い本を校内で読み耽る背徳感、たまらん。何なら同じクラブに入った女子を腐らせて、ゾンビーズでも結成してやればいい…と、毎週水曜日の6時間目(クラブ)が楽しみになります。

そして待ちに待ったクラブ活動初日。ワクテカしながら教室に移動すると、期待とは裏腹に実際のところは女子部員が3人しかおらず、漫画読みたいだけの男子が15人という逆ハーレム状態。

のちのカタリナであればそこで逞しく男子たちを使って掛け算でもしそうなものですが、そのころはまだヒヨっ子。すみっこに追いやられてこそこそ薄い本を読んでいるのでした。しばらくは本を一時間読むだけのよくわからない活動が続きますが、ある日、いつもなら放置するだけの怠慢な担当の教師が黒板の前でのたまいます。

「来月の児童集会で、クラブの活動発表をします。ただ読んでいるだけです、とはいえませんから、皆さんの力作を描いて発表して全校児童を驚かせてあげましょう」

…描く?それまで読み専だったのに、突然部員全員に描くことを強要する教師。そりゃ、リナだっていっぱしのオタクですから、多少の絵の心得くらいはあるけれど、他人様に見せびらかすほどの絵なんて描いたことないです。まして、私の好みの絵って、オスとオスのわななきあいです。さすがに全校児童の前で腐女子炸裂させるわけにもいかない…と、その日からひと月の間、懸命に大衆受けするイラストの勉強をするリナ。何とか図1)くらいのイラストを完成させ事なきを得ます。この時にイラストを描くことに楽しさを見出してしまったリナ。クラブでは当たり障りのないイラストを、帰宅してからは腐ったイラストを…とこの後数年間はゲームしている時間以外はずーっとイラストを描いていました。上達はしませんでしたけど。

当然、6年生になっても同じクラブでイラスト三昧。残念ながら腐ったお友達は作ることができませんでしたが、下手くそながらも絵を描くことに無上の喜びを見出してしまったわたしは中学校に入学してもひたすらゲームとイラストレーション。二次元に恋をしたまま、ろくな恋愛もせず大人になったらどうなるのか…さすがに気の狂ったウチの両親も将来を心配していましたね。まぁ、私の方はというとその辺の女学生よりもはるかにディープな世界を知っていたのですけれど。

 ***

中学2年ともなると中二病真っ盛りになるのがオタク少女の宿星。その年の美術の授業は病んだ少女全開でしてね。その年から美術の先生が若い女性に変わったのですが、新任教師といっても過言ではないくらい若い女性。最初の授業からカオスな展開が待っています。4月から6月にかけてのテーマは「自己表現」。この曖昧なテーマで好きな絵を描けとほざきます。自分の好きな風景を描くもよし、ダリの抽象画のような奇をてらったものもよし。自画像でも、大事な人の肖像でもよし。自分の内面を自由に表現しよう、と。さて、困った。いっそオスとオスのわななきあいを提出してやろうかとも思いましたが、やはりそこは学生。倫理的にもアウトな内容を成績に直結する作品のテーマにするのは憚られます。

仕方ない、ここは本気で風景画の一つでも提出してお茶を濁そう。と、学校帰りの帰り道に見える夕暮れ時の風景を絵にします。わざわざ美術の授業のある前日にはスケッチに行き、授業では彩色する。どこにでもありそうな、まわりを緑に囲まれた大きな池とそこに浮かぶ小島、池の向こうの小高い丘には学校が見えるという水彩画でした。私の深層心理にはこんな風景これっぽっちもなかったけれど。

スパイスとして、

遠くの遊歩道を散歩するカップルは二人とも男にしておきましたけれど。

で、ともあれ作品を提出。すると若い美術教師は大層その絵を気に入ったようでその年の市の文化展覧会に出品しやがります。「まぁ、どうせどこにでもあるような風景画だし、私如きの画力じゃ誰もじっくり見ずに素通りするだろうし、放っておこう」と高をくくっていたのですが、事件が起こります。

教育委員会賞を受賞しました(‘Д’)

いや、お前たち本当にこの絵きちんと見たのか?モカップルが道を歩いているような絵だぞ。わかっていてこんな賞をくれちゃったのか?そうだとしたらほんと審査員のアタマおかしいと思う。市の美術館に飾られちゃったよ、ホモップルが描かれた絵が。そりゃ池の向こうの遊歩道だからちゃんとみないと男同士ってわからないけど、明らかに違和感あるでしょう。アリエナイ。

教育委員会の奴らと市の美術部員の連中は完全にアタマおかしい

そんなこんなで、私が描いた(ホモップルが遠くに見える)学校帰りの風景」は目出度く一か月間美術館に飾られることになり、学校で教師に受賞おめでとうと言われるたびに顔から火が出るほど恥ずかしい思いをする羽目になったのでした。マジであの美術教師アタマおかしい。

 

そんな私のトラウマ全開の風景を見て、ホモップルに気づいた人物がひとりだけいます。

「ねぇ…リナちゃんって…ホモ…好き?(ボソッ)」

『?!』

たまたま授業でペアワークを組んだナオミちゃんです。目の肥えた審美員や美術教師ですら気づかなかったホモップルに気づいたこの女、只者じゃない…

この子、小学時代はミニバス部で活躍していた活発な子で友達も多いし、なによりおしゃべりが大好き。彼女の周りは女子も男子も集まっていて、小さなうわさもこの子の耳に入れば5000倍には拡張して発信される歩く拡声器です。この子にやおい好きなんて知られたら、学年中にわたしの嗜好が知れ渡ってしまう…。

『いや…まぁ…』

「ねぇ、好き?」

ここで、別に好きじゃない、などと言ったところで、この女はわたしの描いたホモップルに気づいてこんな質問をしてきているに違いない。嘘つき呼ばわりされて、学年中に嘘つきのレッテルを貼られるのは避けたい…。どうするリナ…。

しばらく思案してから私の口から出た言葉は

『うん…まぁ…好き…かな』

終わった。私の中学生活。ホモ好きの異常者のレッテルを貼られ、卒業まで変態呼ばわりされるに違いない。男たちの狂宴とともに

 

しかし、予想に反して彼女の次の言葉は

やおい好きなんだね?」でした。

やおいだと…。「やおい(ヤマなし落ちなし意味なし)」なんて単語を知っているのは堅気の人間ではありません。……まさか、この女、腐ってる?

そう、彼女も腐り堕ちていました。しかも私より数段上の腐り方。

彼女、二次創作活動していました(白目)。

なんか福島のお友達とサークルまで作って、年二回ほど都内のイベントでグッズ販売までしているようです。ただし、グッズの方はやおいではなくて、健全な二次創作物。FFやらDQやらのキャラクターをモチーフにした便箋や封筒を作っては販売していたそうです。

小学5年生からずっと同じクラスだったのに今まで知らなかった…ということは隠れオタク。まさか、身近にこんな人が隠れていたなんて・・・。どうやら彼女はずっと私と話す機会を伺っていたようです。というより、サークルに私を勧誘するタイミングを虎視眈々と狙っていたようです。小学生のころからイラストを描き続けている私をみて様子をうかがっているときに、あのホモップルの絵を見てしまい、いてもたってもいられなくなったという…。

「わたしたち、運命共同体だね」

この後私は彼女のサークルになかば強引に入れられ、高校入学後、ナオミちゃんに彼氏ができるまでの間、創作活動を共にすることとなるのでした…。それにしても、60人しかいない学年に腐女子が二人もいたとは…。世の中狭い。まぁ、彼女とはホモの嗜好があまり合わなかったので、腐った創作物は世に出ていないのがせめてもの救いか…。

 

戯れに自身の変わった嗜好を人さまの目につくところに置くもんじゃない…と反省したリナでした。

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図1)昼休みに2分で描いた。

【父の膝の上でガンダムと叫んだケモノ】

ガンダム女子。これはカタリナを象る要素としては、ゲーマー・腐女子・元ヤン・元走り屋に続く五番目の要素だと思っている。「五番目は呪禁師じゃないの?」という方、あなたはリナをよく理解しているけど、まだ甘い。実はカタリナは、リネレボのワル茶のガンダム談義に参加しちゃうくらいガンダムが好き。アステア騎士団一部のオッサンの間では、クロネコ団にいたカタリナって女はガンダム好きの三十路で元腐女子、っていうのが有名らしい(ラインエ〇ジ氏談)。そりゃもう、南瓜様はじめとするガンヲタさんたちと1時間にわたりガンダム談義に花を咲かせ、Twitterでもガンダム好きを全面アッピールしているくらいだから、私からガンダム要素を取り除くのは、例えば、両方の小豆のような大きさの乳房が深くえぐれて中身が見えちゃうくらいの喪失感だ。うん、書いててちょっとアタマおかしいと思った。それくらいガンダムが好き。きっとガンダムがこの世になければ、タダでさえ小さな胸が更にえぐれてAマイナスカップくらいの極ちっぱいになっていたかもしれない。うん、狂ってやがるって自分でもはっきりとわかんだね。

さて、今日はわたしのおっぱいと同じくらいの体積率を占めるガンダムについてお話ししようと思う。まぁ、大したことない占有率であることは間違いない。ツッコミどころと、主義思想が絡んでくる複雑怪奇な話題なので、特にガンダムにおける主義が違う人はそっと画面を閉じよう。

 

かつて幾度かチャットでも話したことがあるかもしれないし、わなないたかもしれないけれど、物心つく頃から私は父上の膝の上でガンダムを観て育った。ちなみに私はリアルタイムではガンダムを観ていない。というかそんな歳ではない。初代機動戦士ガンダムの放映は1979年~80年、私はそれ以降に生まれたけれど、仮に生まれていたとしたら胎教代わりにガンダムを垂れ流されていたかもしれない

うちの父上も生粋のオタク体質で、自分の興味が向けられたものに対しては、母上に向けるそれの実に数百倍もの情熱を注いだ。

釣り好きが高じて、晩年(まだ生きてるけど)船を買って沖に出て釣りをするほどだ。また、刀剣の美しさにはまり、模造刀を自宅で鋳造してしまうほどのキチガイぶりだ。

現在は家庭菜園にはまり、実母(わたしの祖母)の実家が持て余した広大な畑を一人で趣味に使っている。とれた野菜は市場に並ぶことはないが、築地に持っていったらなかなかの値が付くと本職の農家さんが舌を巻くほどだ。

好きなことに情熱を注ぎだすとアホ程の潜在能力を発揮する、サイヤ人のような男である。

そんな、世が世ならアスペルガー症候群と診断されかねないわが父上は、どうやら戯れにTVで放映されていたガンダムをリアルタイムで観て、すぐさまハマったらしい。ガンダムで描かれるヒューマンドラマと、戦争の取り扱い方に感銘を受けたとのことだった。それまでのロボットアニメにありがちな勧善懲悪ものも見ていて気持ちいいが、きれいごとじゃあ済まされない戦争のおどろおどろしさと、戦争に叩きのめされたナイーブすぎる主人公が戦争を通じて人間的に成長していく様は、戦後7年でこの世に生を受けた父にとってはいろいろと重なるものが多かったのかもしれない。

彼自身はけっして繊細でもなければ、ニュータイプでもないチリチリの天パではあるが

ともあれ少々頭のおかしい父上はわたしの情操教育にガンダムを使うという、狂気じみた奇行に走る。PTAに吊るしあげられても何も言えない。そのためだけに当時高級品だったVHSを購入し、おなじくヲタクの彼の友人からガンダムのビデオをダビングしてもらい、居間で毎夜毎晩ガンダムを観続けた。もはや何周したのかもわからないくらい観た。なにせ、ご幼少のみぎりのカタリナさんは「シャアとけっこんする」と息巻いていたらしいから、4歳くらいの頃から二次元の世界にどっぷりだったのだ。正直こんな遺伝子要らない

で、うちのキチガイ親父は、娘が3周目か4周目を観終えてだんだんとストーリーを覚え始めると今度はモビルスーツの解説までするようになった。ガンダムガンキャノンガンタンク、ジムは言わずもがな、ザクⅡ、グフ、ドム、ゴッグズゴックアッガイゲルググ、ギャン、ジオング。わざわざ中学生が買うようなモビルスーツ図鑑みたいな本まで買ってきてのガンオタ教育ぶり。うん、アタマおかしい

 

今思うと、このままこの父上によりオタクの英才教育を受け続けていたらどっぷりガンオタガンダム女子まっしぐら。キラキラ小説なんて読むこともなかったし、少女アニメを観るなんてこともなかったし、オスとオスの世界になんて目を向けることもなかったはずだから、カタリナという名の腐女子は誕生していなかったかもしれない

実際は父の英才教育はとどまることを知らず、進行性の病巣のようにリナの心身を蝕んでいくのだが。

ところが、このオタクの英才教育を陰ながら憂い、「娘が遠い世界に行ってしまうのではないだろうか」と危惧している人物がいた。

もう一人のキチガイ、我が母君である(第2回参照)。アタマは少々おかしいが、それでも一人の女性。娘がロボットアニメに傾倒し、生粋のキチガイ父上の色に染まりゆくのを黙ってみていられなかったらしい。とはいえ、典型的な昭和の中流家庭な我が家。ご多分に漏れず、家庭の決定権は絶対的に父親が握っていたため、母君が表舞台で発言することはほとんどなかった。そこで彼女は一計を講じた。それは弟を作ること。

「男の子をもうけてしまえば、娘がガンダムから解放されるかもしれない」

そう考えた母は、それはもう熱烈に弟が生まれることを望んだらしい。あくまで表向きは、リナがひとりっ子でかわいそうだからとのことだが、その実は悪魔の父から娘を取り戻すだったという。その涙ぐましい努力は生々しいので割愛するが、その甲斐あってかリナが5歳の時、待望の弟が爆誕する。生まれながらにしてオタクになることを運命づけられた子である。事実彼は将来、父親の負の遺伝子を如何なく発揮して私でもドン引く位のキチガイに成長するのだが、それはまた別の話。

 

数年後、母君の思惑がさく裂し、弟が物心つく頃には彼が父親の「ガンダムを使っての英才教育」を受けることになり、リナは解放された。

かに見えた

が、時は1986年前後。賢明な読者ならお気づきかと思うが……機動戦士ガンダムの続編にあたる「機動戦士Zガンダム」が放映されていた。ここまでの間にザブングルダンバインバイファムエルガイム綺羅星のごときロボットアニメが放映されていたのだが、ガンダムに傾倒しているキチガイ親父はガンダム一択。弟も私もZガンダムを今度はひたすら見させられることになる。どうやらガンダムトミノ監督、そして我が父上に終わりが来ないと真の意味でリナが解放されることはないらしい…。

それでも、弟を生贄にして普通の女の子としての道を見出すことに成功した私は、間もなく小学校に上がり、そこで出会った友人たちと母の望むような交友関係を築き、表面上は普通の女の子としての生活を送る…心の奥底に小さな火種を燻ぶらせながら。その火種はほんの数年後にはあることをきっかけに、取り扱いに困るくらい大きくなり、ガンダムを主軸にさらに幅の広いオタク道へとリナを導いてしまうのだが…それはまた別の話。

 

【次回予告】

弟を犠牲にして、ガンダムからいっときは解放されたリナ。ところが、この世の混沌を司るヲタ神は徐々にリナの心身を蝕む。数年後、受け手としての腐女子であることに満足できなくなってきたリナ。暴走し、ほとばしる情熱とひとかけらの才能…。美術室で出会った才女に、ついに禁断の扉をこじ開けられる。

次回、「瞬間、心腐れて」

この次もサービスしちゃうわよぉ

【腐りゆくリナのお話(後編)】

「前回までのあらすじ」

命…夢…希望…、どこから来て、どこへ行く?そんなものは…すべてやおいに帰着する‼

と、腐りきった小学校の保険医のかけた呪いによって腐海入口の扉の前に立つリナに明日は来るのか!?「世の中、腐ってやがる(腐女子的な意味で)」

 

腐りきった保健医によってもたらされたマインドスクリーン。挿絵がキレイな小説だなー、とその時はちょっと気になる程度の軽い火傷を負っただけでしたが、その日の学校の帰り道に仲良しグループで和やかに談笑しながらの道すがら、とある娘っ子が爆弾発言をします。

「保険医の持ってた小説(マインドスクリーン)…読んでみようかな…」

ここにも高河ゆんの挿絵に心奪われた腐りかけの女子が居りました。

はたして、この駄文の読者にわたしと同世代の女性がいるのか、果てには小学4年生あたりからキラキラ小説(ティーンズ文庫などのライトノベル)を読み漁っているキッチュな乙女がいるのかは不明ですが、わたしは当時「アナトゥール星伝シリーズ」という、折原みと先生の異世界転生もののラノベにはまっていました。完全な少女趣味。物心つく頃から少々頭のおかしい父上の膝の上でガンダムを観て過ごした生粋のオタク体質だったわたしは少女小説を読むことも、ロボットアニメを観ることも、天空戦記シュラトを観ることも全く抵抗がありませんでした。気が付くと、私はマインドスクリーンを読むとのたまった腐女子予備軍のゆかりちゃんと待ち合わせてその日のうちに書店へと足を運んだのです。

しかし、片田舎にある町の書店は現代のようにBLコーナーが充実しているなんて言うことはなく、やおい小説など店舗のどこにも陳列されていないのではなかろうかというほどに品ぞろえが悪かったのです。店員に尋ねたところで「うちではお取り扱いがございません」と無情な答えが返ってくるだけでした。悲しそうに帰路につくゆかりちゃん。そこへ、生粋の純粋培養オタク体質のわたしに天啓が閃きます

「BookBoxに行ってみようよ。あそこなら置いてあるかもしれないし、中古本だから安く買えるかもしれない」

BookBoxというのは、私の住む町の古いアーケードの一角にポツンと建つ古本屋さんであります。見るからにオタク、さもいえばオタク臭がプンプン臭ってくる感じの脂ぎったオッサンが店長を務める、コミックの品ぞろえは市内随一、アニメグッズまで置いている、キングど田舎シティのオタクたちにとっては聖地とも呼べる店でした。私もお小遣いをもらうたびに足しげく通い、ラノベをあさったり好きな漫画を安く買ったりしていたものでした。ここならやおい小説の1冊や2冊簡単に手に入るかもしれない!そう思い二人で意気揚々と店内に入ります。個人経営の割には広い店内の通路の中ほど、少女小説ラノベが陳列されている棚にそれはありました。

「あった!あったよ!」

ゆかりちゃんがいち早くマインドスクリーンの1巻目を見つけます。だがしかし、1巻目は在庫が1冊しかない。

「1冊しかないね…」

通常の本屋さんにはストッカーと呼ばれる引き出しが最下段についており、そこに在庫が入っているのですが、このお店にはそんなものはありません。つまり、棚にあるものが在庫の全てです。お目当ての腐った小説はわたしとゆかりちゃんのどちらかの手に握られることとなります。

ですが、わたしはその時はまだやおい小説の中身というよりは、高河ゆんの挿絵に心惹かれていただけでしたので、潔くゆかりちゃんにマインドスクリーンを譲ります。

「わたしはここのお店良く来るし、また入荷されたらその時買えばいいよ。わたしが買うより前にゆかりちゃんが読み終わったらそのとき貸してね」と、マインドスクリーンはあきらめ、その代わりになにかラノベでも買って帰ろうと店内をうろうろしだした私。そこで私はこの後10年ほどの人生を変える出会いを果たしてしまいます。

ここBookBoxの最深部に、素人は近付いたらいけない雰囲気を醸し出す薄暗いゾーンが存在していました。裸電球で故意に薄暗くしているようにも感じられるその一角。普段は大人なお姉さんが占拠していたり、見た目にも太ましい男性が立ち読みをしているため近付かないゾーンでしたが、その日に限り店内にお客はわたしとゆかりちゃんだけ。いままで足を踏み入れることのなかった神秘のゾーンを覗いてみることにしました。

 

『えっ』

何だこの不思議な本たちは。なんで私たちの知っている漫画のキャラクターたちをまんまパロった本がこんなにたくさんあるんだ。そして、この薄さは何なんだ。20ページくらいしかない…。印刷も雑だし、ひどいものは白黒コピーされた原稿をホッチキスで止めただけのような本まである…。

薄暗い最深部のゾーン、実に本棚3スパン分が丸々同人誌コーナーでした。所狭しと本棚にひしめき合う薄い本たち。なんだか原作よりかなり下手くそな絵の本から、原作のクオリティを完全に超えてしまっている作品、表紙を一目見ただけでホモ本、エロ本。タイトルだって

「幽介、挿入れられる」

「おてんば姫と棒剣」

亀仙人×ブルマ10本勝負」

とか、アタマおかしいとしか思えない。

倒錯的すぎて小学4年生にはついていけません。うわーうわーうわー、こんな世界があったのか…と、その場から走り去りたい気分になりました。そうか、いつもあそこで立ち読みしているお兄さんはこういうのを読んでいたのか・・・。そういえば昼間学校で保険医(キチガイが、男性が興奮したときのカラダについて教えてくれた・・・。…文字通り立ち読みだったのか…。うわー…と、ふと一冊の幽☆遊☆白書のパロ本が目に留まります。

「Wild Wind」

黒一色の背景に、抱き合うでもなく適度な距離感で描かれる飛影と蔵馬。中身は…ビニールでシールドされていて読めない…。中身が確認できないけど、この表紙ならそこらのエロ本ではないと思う…。値段もお手頃。表紙の絵もキレイだ…。そういえば、一期一会って言葉をきのう国語の時間に教わったっけ…。と、一大決心し、その薄い本を手に取りレジに向かうリナ。妙に手に汗握っていたのを今でも覚えています。そう、最初に手に取った薄い本は幽☆遊☆白書の蔵馬×飛影の本

ゆかりちゃんにあのときマインドスクリーンを譲っていなければ、カタリナという腐女子は誕生していなかったかもしれません。

以前、とある禅宗のお坊さんに、人生は常に「やるか、やらないか」の二択問題を強いられている。どちらにも正解はないけれど、選んだ答えの先にはすぐにまた別の二択問題がある。そうして無限に枝分かれしていく分岐の着地点が人の死ぬときにやっとわかる。

「あのときこうしていれば」と思える分岐も、分岐と気づかず無意識に選択したそれも、やってよかったと思えるものも、かならず意味がある分岐だ。人生の分岐点に無意味なものはない。すべてがあなたを象る要素の一つとなるものだ。だから、後悔なんてしなくてもいいのですよ…と。なるほど、今思えばあの時薄い本を選んだのも間違いではなかったのかもしれない。

 

その日の夕方、ゆかりちゃんとお茶をして別れた後、ワクテカしながら持ち帰った薄い本を帰宅後すぐに開封ましたが…

 

 

 

 

 

全編蔵馬×飛影のエロ本だったわ!!

 

私の悶々した時間を返せ!

…やっぱり、選択を誤っていたのかもしれない。

 

【次回予告】

オタクの申し子カタリナも、純新無垢なそれはそれは真っ白な時期があった。しかしその期間は正真正銘の彼女の父親によって破られる。驚愕する母親。心配する祖父母。そして汚されゆくカタリナ。弟が生まれたことにより、彼女の世界は更なる混沌へと堕ちていく。

次回「父親の膝の上でガンダムと叫んだケモノ」

さーて、来週もサービスサービスぅ!

(エヴァンゲリオン次回予告の曲で)

【腐りゆくリナのお話(前編)】

普通の小学生だったわたしが、腐り堕ちオスとオスの夜のわななきの世界に目覚めたのは、今から20年以上前、女子児童たちが多目的ホールに集められ、理科で習った植物の受粉、おしべとめしべの関係を、ほ乳類に置き換えて保健医(30代独身女性)から説明されたときでした。いわゆる性教育というやつです。私の通っていた小学校の保険医は少々頭のおかしいところがあり、ほ乳類の交尾を女生徒に説明する際のイラストが何故か馬。もちろんイラストなのでコミカルに描かれてはいるけど、これリアルを想像したらこの上なくグロテスク。奇跡の惑星・地球での生命の誕生はかようにグロテスクだと哲学的なことを女子児童に言いたかったのか、はたまたこの先の人生で「馬並みなのね」というセリフを吐くことがあるかもしれない女子の記憶の片隅に引っかき傷をつけたかったのか、当時はさほど深く考えることはありませんでしたが、今思うとあの保険医アタマおかしい

で、ほ乳類の中には「ヒト」も含まれていますね、という切り口で人間の生命の営みについての高説が始まるのでした。冒頭の馬のくだり、まったく要らないだろというツッコミをぐっと飲み込んで、神秘の世界を垣間見ることにしました。ちなみにこの時のわたしは対外的には、そういう知識の全くないキッチュな裏表のない良い子で通っていましたが、この保健体育もどきの性教育を受けたその日から、ダークサイドちるフラグを光の速さで回収していきます。

なお、最初はヒトのオスメスの体のつくりの違いから、人間の赤ちゃんの作り方(婉曲表現:オスメスバトル)~のようなステレオタイプの教育内容でしたが、途中からスイッチが入ったのか、血迷った保険医はヒトが赤ちゃんを作るには、お互いの愛がどうとか、感情が昂るとどうとか、事務的で義務的な種の保存としての内容からだんだんと精神世界へと主筋が逸れていきます。

当時、子供たちの間でにわかに流行っていたTV番組の中にとんねるずのみなさんのおかげですがありました。石橋貴明さん扮する保毛尾田保毛男という、青ひげに口紅、口調は妙になまめかしい、現代ではTwitter炎上の導火線になりかねないセクシャリティーやジェンダーの絡む、端的に言うとホモセクシャルをモチーフ(といってもあそこまで露骨なホモなんていないけど)にしたキャラクターが大人気で、男子たちはこぞって保毛尾田のモノマネをしていたのです。1998年に有森裕子さんの元旦那様ガブリエル氏が

「I was gay」発言をし、世の中にゲイ旋風が巻き起こるまで、子供たちの中では同性愛者の呼び名はホモだったのです。そして件のイカレタイカした保険医は、好奇心旺盛な女子児童の「ホモって正しくは何ですか。男が男を好きになるっておかしいと思います。子供も作れないし、意味がないと思います」という投げかけに、禁断のセリフを言い放ってしまいます。

「世の中には、それはそれは美しい同性愛もあります。すべてが保毛尾田のようにキモチ悪いわけじゃありません。見ていて感動する同性愛だってたくさんあるのです」

正確な記憶ではないけれど、大体のニュアンスはこんな感じだったと思います。保険医の言葉に首をかしげる児童たち。現在の世の中ならジェンダーフリーを求める声であったり、性転換や性同一性障害、そしてBLなどという情報があふれていますが、そのころはインターネットなどないTVが絶対的な情報源。TVからは保毛尾田くらいしか同性愛の知識は得られないですから、保険医の言い放った「美しい同性愛」がどんなものなのか、幾人かの児童は興味を覚えたようでした。

「じゃあ、美しい同性愛の例を見せてください」と一人の児童が言い放ちます。たしかヤスヨちゃんって子だったと思う。この子の一言が、保険医の心の奥底に秘められていた小さな火を、灼熱の炎換えてしまったのかもしれません。

「ちょっと資料を用意するので、5分ほど静かに待っていて下さいね」と、その場を去る保険医。この時誰かが「時間がもったいないので、あとで保健室に見に行きます」くらいの提案をするだけの勇気を持ち合わせていたらカタリナという名の腐女子は誕生していなかったかもしれない。

5分後に保険医が持ってきたのは、まごうことなき「BL小説」。たしか「マインドスクリーン」だったかと記憶していますが、挿絵が同人出身のイラストレーター兼漫画家の高河ゆん先生。当時で言うと鉄板のやおい小説。挿絵もBL、中身もBL、BL、BL。

この保険医、腐ってやがった。ヘルプミー。わたしはここにいます。

(後編に続く)

【音楽ビンボーとFF11への誘い(後編)】

「前回までのあらすじ」

リナ、えふえふ11をプレイするためだけにパソコンを買うぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ

(元ネタ:ゆうて いみや おうきむ こうほ りいゆ うじとり やまあ きらぺ ぺぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ ぺぺ)

 ちょっとイケメンの先輩にそそのかされて触発されて、ヴァナディールの世界に足を踏み入れたわたしは、とりあえずお試しのつもりで先輩とは別のサーバーを選択しました。カーバンクルサーバーでしたね。単にカーくんがカワイイからとかそういう理由だったと思います。

FF11は最初に所属する国と種族、ジョブ(このころは戦士・モンク・シーフ・白魔導士黒魔導士・赤魔導士)を選択させられます。

ヒューム族(人間。なんでもそつなくこなすが性格破綻者が多い)とガルカ族(見た目はごつい獣面。筋骨隆々)が多く所属する鉱山と技術者の国バストゥーク共和国。

エルヴァーン(見た目エルフ。顔色が悪いのはこのころからデフォらしい)が所属する騎士道と他人を馬鹿にするのが3度の飯よりも大切な頭の固いサンドリア王国。

タルタル族(見た目小人。ガルカと並べると小豆。FF11のかわいい担当)とミスラ族(見た目ネコミミのナイスバデー。FF11のお色気担当)が所属する荒野のオアシス魔法の国ウィンダス連邦。

わたしはUOウルティマオンライン。詳しくは第2回を参照)では包帯の取り扱いが妙に上手い戦士でしたので、FF11でもヒューム女の戦士を選択。当然名前は「Katharina」。

属国はなんとなくヒュームが多くいるらしいのでバストゥーク深く考えずにキャラメイクをするとあとあと悲劇を呼ぶことをわたしはこの時知りませんでした。

最初片手剣を装備しているから、剣士然とした正統派な戦士様(DQでも銅の剣もった戦士様というのが定石だし)を想像していましたが、後々その幻想は粉々に粉砕されます。戦士の象徴としてプレイヤーに求められる武器、両手斧でした。女の子が両手斧を背負って街中を走り回る姿って・・・。今のように攻略wikiなんてものがメジャーではなく、加えてまとめサイトのようなものも少ない時代、せめて事前情報を何かしら仕入れていたら、ほかのジョブを選んでいたかもしれませんが、ヴァナの住人となってしばらくたってからそのことに気づき、やり直す気力もなく仕方なくそのまま両手斧を使い続けるリナ・・。ジラートの幻影プロマシアの呪縛アトルガンの秘宝アルタナの神兵・・と拡張ディスクが出るたびに転職の転機を迎えますが、かたくなに戦士を続けるわたし・・・。何が私をそこまで駆り立てたのか覚えていません。多分頭おかしい。

 

さて、ヴァナディールの生活は語り始めるとひと月分くらいの容量になりそうなので、簡潔にまとめます。

狩って釣って作って売ってた

MMOをプレイしたことのある人ならこの四つで大体ご理解いただけると思います。Mobを狩ってレベリングしつつ素材やアイテムを入手。まれに出現するレアなmobからレアアイテムゲット。釣り竿を買って、水のあるところでひたすら釣りに興じる。釣ったお魚は料理の素材としても利用できるし、競売(取引所)に売ってもお金になる・・・。まぁ、釣り以外にも素材の採取っていろんなところでできるし、生産スキル上げたいなら避けて通れない道。

思うに、MMOの究極の目的って、「仲間と一緒に強くなること」「稼ぐこと」の二つだと思うんですよね。

わたしはどうしても仕事の関係上、どっぷりと狩りに出ることが難しかったため、必然的にレベリングよりも、マクロで放置できる生産の方にシフトチェンジする傾向にあるんですが、その点FF11は本当に優れていました。あそこまで詳細なマクロを本編ソフト上で作らせてくれるとか、上記の「稼ぐこと」できっちりユーザーを楽しませる気概を感じましたし、戦うだけがMMOの楽しみ方じゃないということを教えてもらいましたね。

FF11を引退した後も発作的にMOやMMOに手を出すことが多いですが、基本スタンスは「レベリングそっちのけで生産する」でやっています。リネレボは装備品の合成くらいしか生産ぽいことはできませんし(2018年3月時点)、素材も道端に落ちているわけではないので、いざ始めてみてから「えー…」ってなったのを思い出しました(笑)

 

話がそれました。FF11で学んだことはもうひとつ。声を出さないと関係の構築はできない、ということ。実はFF11、前述の所属しているいずれかの3か国のミッションを一通り終えると、一大大国ジュノに向かうというミッションが発生します。が、これがまたソロだとしんどい。一人で向かおうものならばジュノにたどり着く前に強敵に阻まれてほぼ確実に死にます。運よくソロでたどり着く猛者も中にはいましたが、総じてPTで一丸となって向かうか、LS(リネでいう血盟)の援護を受けながら向かうかの方法をとることになります。集団行動を前提に難易度の調整をされているため、ある一定の地点から急激に難易度が跳ね上がり、仲間のいないコミュ障はお引き取りを、みたくなります。そこで、街でPT募集をしたり、LS内で支援者を募ったりして進めていくのです。リネで言うと次元ダンジョンみたいなものですね。ですが、当時のFF11は本当に人が多くて、自分から声を上げないとPTなんて捕まらない(白魔導士は声がかかる恨めしいうらやましい職でしたが)。知らない人にも思い切ってお誘いのtellを送ったりしながら交友関係を広げていったものです。LSチャットって本当に楽しくてついつい時間を忘れて話してしまいますが、中には全くおしゃべりしない人も居ました。やっぱりそういう人は誰からも支援してもらえないし、気が付くといなくなってたりします。

組織って人が集まって作られるもので、人が作った組織が、人を育てるんだと思います。

せっかく集まった仲間なら、わいわい話して突っつきあいながら楽しみたいものですね。

その点、MZRは本当に良い組織だとわたしは思いますよ(今のところは)。

【音楽ビンボーとFF11への誘い(前編)】

腐女子を卒業して、大学デビューを果たしたリナ。大学時代はわたしの後期人格形成の一端を担っていたといっても過言ではありません。

国語学部で有名な某大学に進学したものの、最初の1年で学ぶべきことをすべて学んだと勘違いした私は、入学当時から加入していた軽音楽サークルでの活動に没入していきます。寝ても覚めても音楽、音楽。講義もさぼって音楽、音楽。単位を落とそうが、同クラスの子たちに心配されようが知ったこっちゃない。

そりゃもう狂ったように、親の仇かってほどシンセ弾いていましたね。世が世なら、新型鬱病とか大人のADHDと診断されてもおかしくない。ほんと頭おかしい。

話を戻します。音楽ビンボーな私は当時塾講師のアルバイトをしていたのですが、あまり有名ではない個人経営の学習塾だった為か、お給料も少なく、収入はすべて日々の生活に消えていき、このままじゃ楽器も買えない!という人生の岐路に立たされていました。いっそのこと売ってしまおうかとも思っていたS13シルビアが峠道で天に召され、商売道具のシンセだけは絶対売りたくない・・・と、転職を決意したのは21歳のころだったかと記憶しています。

そのころは勤め先で主任講師になっていた上に、オーナーに気に入られて、塾の一室(マンションの一部屋)を格安月額20000円の支払で間借りしていたのですが、転職に伴い実家からの通学に切り替えます。まぁ、正直なところオーナーが講義中の私のケツばかり見ていることを生徒から密告されて若干引いたのが原因の一つなのですけどね。ふぁっく。

さて、故郷に戻ったのはいいが、千葉県外房の田舎町で生活するには足が必要・・だがしかしシルビアは天に召されている・・さらに不便なことに、実家は最寄り駅から車で15分、頼みの綱の路線バスは一時間に2本、私が日々肩からぶら下げて歩いているシンセは重量18㎏。自転車で通うのはさすがに無理だし、新たな足が必要・・・と、これは相当稼げる仕事を探さなきゃいけないな、と思っていた矢先に、前の職場のアルバイトスタッフ募集の広告を見つけます。

時給1215円~誰でもできる棚卸スタッフのお仕事。

週2日から応募可。短期バイト歓迎。

高時給なのも、誰にでもできる簡単なお仕事というのにも心惹かれて、

『とりあえず2,3日出勤してみてダメそうだったら辞めよう』

くらいの軽い気持ちで応募しました。・・・・・・これが地獄の入り口とも知らずに・・・。

さて、さほど意気込んだわけでもなく何となく面接をパスして、初日の研修を終えた感想としては、業務内容はいたって簡単。小売り店舗が閉店した深夜に、そのお店の商品を数えて、腰にぶら下げた大きな電卓のような機械に「どの棚に何の商品が何個あるのか」を入力していくだけ。ただ、その会社が推奨しているのは機械の画面も見ずに、テンキーをブラインドタッチで入力すること…指が速くてテンキーをブラインドタッチできる人は意外にもごくまれで、ほとんどの新人さんは画面もテンキーも確認しながら入力するのでスピードが遅い。画面を確認すると、視線が商品から逸れてしまうのでミスが多い。多くの新人さんは十人一絡げでまとめられており戦力としては見られていない→仕事がつらく感じる→離職する→新たな新人さんを投入→エンドレス、という自転車操業みたいな会社でした。

が、皆さんはここで思い返してほしい

リナのスペック:狂ったようなシンセ弾き。UO(前回の駄文参照)にドはまり。

シンセ弾き⇒指、速いよ。五本の指が自由に動くよ。

UOにドはまり⇒チャットモンキーかってくらいに狂おしいほどブラインドタッチだよ。テンキータイプなんて楽勝w

そう。この会社が新人に求めるスペックを軽くオーバーしています。案の定、事件は起こります。

現場初日どこかのスーパーでの棚卸。顧客の棚卸方式は少し特殊で、通常バーコードをスキャンして数量を入力するだけなのですが、このお店は価格と数量を入力しないといけません。言ってしまえば、研修中の新人が行くような企業ではないです。けどリナは違いました。

通常その顧客における生産性(1人当たり一時間に何個数えられるか)は、新人で1000個/H。ベテランさんでも4000個/Hくらいで設定されていましたが、その日のリナ→4500個/H。

初日からやりすぎました。案の定「ヤバイ新人が入った」と現場責任者たちの間で噂となり、入社から1週間経過するころには「次の繁忙期には責任者教育するからね」と営業所長に見初められ、お小遣い稼ぎ目的で入社したはずが、あれよあれよという間に気が付いたら責任者になっていました。ガッデム!

もうこの会社からはしばらく逃げられない・・学生なのに・・。

余談ですが、責任者ってただのバイトリーダーにしか見えないんですけど、行く企業によってはとんでもない大物と対峙しないといけない場面があって、リナが現役時代いちばん対決してしんどかった大物はAE〇Nの副社長や、東急〇ンズの本部長、〇紅の社長、西YOUの取締役など、大型チェーンのお偉方。二度と会いたくないなあ、特にA〇ONの副社長(笑)

話を戻します。ちょうど私がこの会社に入社した年、日本ではファイナルファンタジー(以後FF11)が発表され、UOリネージュラグナロクオンライン天上碑などのMMO業界に新風が巻き起こっていました。ボーダーレスなワールド、PKレスなシステム、MMOのくせに妙に設定やストーリーがしっかりしている等、国産MMORPGとしては伝説級の作品です。わたしはというと、発表当初は忙しさを理由に避けていました。ついでに言うと、求められるPCスペックが当時としては高すぎて、当時私が持っていたT君からもらったPCや、うちのキチガイ少々頭のおかしい母上のFMVでは動きもしませんでしたので、どちらにせよプレイできない状態でした。…が、責任者として激務をこなすようになってひと月がたった給料日、ワクテカしながら給与明細を開くと21歳の女子大生には普通じゃ稼げない額の給与36万円が振り込まれていました。長時間労働による残業手当と責任者としての現場管理手当が増えただけで軽く額面で40万円を超えていたのです。加えて、責任者の統括をしていたちょっとイケメンの先輩が無類のFFフリークで、繁忙期の終了とともにFF11休暇をとってヴァナディール(FF11世界の名前)の住人となったのを横目にみていたら沸々とFF11やりたい欲望が湧いてきて、気が付けばドスパラでPCを買っていたのでした

(後編に続く)

【MMORPGと切れないあいつ】

 7月も第4週に入り、世の中は完全に夏真っ盛りでひと夏の経験を満喫、わたしの懐具合だけが8月の南半球のごとく寒いのではと切に感じる今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 さて、今回のお話はMMORPGの世界に身を置くうえで避けて通れないお話。

 

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今から約20年前、世の中の最先端技術がwindows95やら98の、当時すこし齢を召された方々はインターネットを「パソコン通信」などと呼び、現在の紳士たちが「インターネット接続=無修正画像」だと勘違いしていたような頃、わたしは一人の男友達と毎日ネット上で遊んでいた。

 うちのキチガイな、丁寧な言葉で言うと少々頭のおかしい母上は、新しい物好きな上に、当時芸能界を闊歩していた木村〇哉の絶対的なファンだったためか、富士通のパソコンFMV(当時木村某がCMキャラだった)をある日突然買ってきた。創作活動で貧乏学生だった私にPCを買う金銭的余裕などあるはずもなく、燦然と輝くPCが我が家の居間に鎮座している様を帰宅後に見たときは危うく五体投地しそうになった。しかも、家電量販店の店員に何を吹き込まれたのかわからないが、モデムまで買っておられた上に、プロバイダ契約もさらりとやってのけてあった我が母君。その時だけは母の気狂いに心の底から感謝した。

 

「お姉ちゃんパソコンほしいって言ってたし、お母さんはキム〇クに貢げるし(ry」。

 

動機が曖昧な上に、不純。会ったこともない芸能人に貢いだ気になれるとか、やっぱダメだこの人

 とにかく、我が家にもネット環境が来た。これで遠方に住む同人仲間にもメールで原稿を送ったりできる、と当時の私は第3次産業革命を礼賛した。これが現在の私のカオスに直結する事案だったのだが。ほどなく腐女子は高校と同時に卒業し、大学通学のため埼玉にて一人暮らしを始める。当然FMVは実家に置いたまま、ネット接続とは無縁の生活になる・・・・・・はずだった。

 埼玉に移住してからひと月もたたぬうちに、高校時代からずっと仲良くしていた男友達のT君から連絡が入る。産婦人科医の次男坊の彼は、裕福な生活をしつつも自ら書店でアルバイトをしつつ、その男女分け隔てなく付き合う性格が気持ちよく、高校時代、学校は違えど、毎日のように彼の家に遊びに行ってはゲーム三昧の日々を過ごしていた。そんな彼T君が久々に電話をしてきたのだ。

 

UO一緒に遊ぶ相手がほしいので、そっちにパソコン送るわ」

一瞬我が耳を疑った。パソコンを・・・送る?何を・・・言っているのか・・わか・・・らない・・。

 青天の霹靂すぎて思考停止したが、話を聞くとT君の兄上が音大を卒業すると同時にPCを新調し、お古のPC(といってもBTO品でかなり高性能)が手に入り、今あるPCを私に送るというのだ。さすが金持ちは気前がいい。

『ところでUOって?』

ウルティマオンラインだよー。ネット上のプレイヤーを操作してRPGするって感じかな。MMORPGっていうジャンルなんだけど」

『ん、知らない人と遊べるってこと??』

「知らない人が大多数だけどサーバー同じにすればリナとも遊べるよ。チャットで会話して…って感じかな」

『なにそれ超楽しそう。やる。すぐやる。パソコンください。ぶひぃぃぃ

 

これが私とMMOとの出会いであった。初めてのMMOは正直楽しいことばかりであった。日本でやっと市民権を得たばかりのMMO。当然、プレイヤーの質もそれほど高くないし、極ごく一部のプレイヤーのみが神様の扱いをされる世界。不親切な世界観ゆえに自由すぎるフィールド。外部ツールの使用規制もザルで、包帯を巻く放置マクロを組んで一晩放置するとスキルマになっていたり。こんな楽しい世界があったのか、と当時の私は感動した。

 が、当時から、深淵の水脈のようにMMO界のアンダーグラウンドを蹂躙していたのがPKであった。今のリネレボのようにただ殺されるだけでは済まない殺人。殺されたものは幽霊となって肉体を離れ彷徨い、ヒーラーの手で復活しなければならず、肉体の方はというと殺人者により死体漁りに遭い、めぼしい所持品はすべて略奪された。ちょっとトイレになんて行こうものならば、戻ると死体になっており数時間分の稼ぎがなくなったりと、何度か心折れそうになったのを覚えている。ただし、殺人者にも相応の制裁が加えられるのも特徴であった。街の入り口に立つ「ガード」に殺人者が近づくと文字通り瞬殺される。ワールド内でのロールプレイにより犯罪者となったプレイヤーには制裁を、という意味合いが強かったと思うのだけど。まさに現実世界のロールさながらに運営される世界だといまでも思う。

 今も昔も理由なき愉快犯的なPKって嫌われる事が多いけれど、UOは被害者が運営に苦情を入れまくったおかげか、PK禁止ワールド(鯖)が生まれた。リネレボは、というと愉快犯に辟易したプレイヤーは「萎えました」の一言でゲームを去っていく。そんな彼らに伝えたい。

 言葉を発することで変わる世界もある。まだまだゲームを捨てる前にやれることがあるんじゃない?神(ネ〇マ)が青ざめて世界を改変するまで声を発し続けることも、MMOに生きる私たちに課せられたロールなんじゃないだろうか、と。

 

 ところで、その後、運転免許を取得すると同時に薄い本とUOを投げ出し、先輩のお古のシルビアS13(KPS)を駆り、走りたがり屋の道へと足を踏み入れたのは、また別の話。